この週末はのんびり過ごした。


所用で目黒に行ったついでに、庭園美術館まで足を伸ばす。
土曜日の午前中。
人も少なくて、晴れていて、緑がきれいで。とてもいい気持ち。
ガーデンカフェで本を読みながら、恋人からの連絡を待つ。
恋人は隣駅の五反田でフットサルの大会。
フットサルの後に、近くにあるフランクリン・アベニュー に行くことにしていたのだ。
晴れた穏やかな休日に似合う、ハンバーガーレストラン。


恋人を待つ時間はとても好き。
すぐに会いたいという気持ちにそっとふたをして、いましていることに没頭する。ふりをする。
たとえば読書。たとえば散歩。映画。植物の手入れ。掃除。洗濯。料理。
でも心の片隅は待つことに集中している。
電話が鳴るとドキドキする。あるいは待ち合わせの時間が近づくと。


フットサルが終わった恋人から、大井町で待ち合わせという連絡が入る。
フランクリン・アベニューは?と思いつつもとりあえず移動。
おなかが空いたので、ブルドッグという昔ながらの洋食屋さんに入る。
飴茶色の壁紙、古びたサンプル、おばあちゃんのお給仕。


あれ、そういえば。
ハンバーガー食べるとか言うとったなあ。ごめん。忘れとった。


と。恋人は熱々の串カツをほおばりながら言う。
私は向かいの席でハンバーグ定食を食べながら、なんだか可笑しくて笑ってしまう。
本当にうっかり忘れるのだ。この人は。いろんなことを。


夜、つまらないことで少し喧嘩をして。そしてすぐに仲直りをする。


喧嘩をすることはとても嫌い。
どんな小さな喧嘩でも、それですべてが終わってしまうような、終わりにつながっていくような、そんな絶望的な気持ちになるから。
でもこの人となら喧嘩をしてもいいかなと思うようになった。決定的ではないことなら。
この人となら、喧嘩をしても終わりにはつながらない。喧嘩をする価値がある関係。そんな気がするようになってから。


翌日の日曜日は、それだけで嬉しくなるようないいお天気。


フットサルで転んで手を傷めた恋人は、ゴルフレッスンをお休みにした。
そんなわけでだいぶ時間が取れたので、近くで日用品の買い物をしたり、株の銘柄を決めたり(最近恋人は株をはじめた)、本を読んだり、連休に遊びに行く場所を決めたりして過ごす。ふたりでゆっくりと。
まだ日が高い夕方に少し遠くの銭湯まで行き、晩ご飯はお好み焼きを食べる。


すっかり暗くなった帰り道。見上げると空には満月。
冴え冴えとした白くて美しい月。
ふたりで月を見ながら歩いているうちになんだかどっと愛しい気持ちが増してきて、
恋人の手が荷物でふさがっていないほうにまわる。

少し怪我をした左手のほう。


ふたりで帰る、満月の道。