特別に信仰心が篤いわけではないのだけれど、
京都や奈良、鎌倉などの古い寺社や史跡がある町には心惹かれるものがある。
鎌倉のそばに住んでいた頃は、江ノ電で鎌倉まで行き、時には自転車に乗って。本当によくあの辺りを歩いた。

鎌倉にあるお寺の中で、もっとも好きなものの一つが報国寺。
鎌倉駅から歩いて30分以上かかるだろうか。
バスやタクシーに乗った方が早いのだけれど、私はいつも街道筋を歩いていく。

報国寺にはそれはそれは美しい竹林がある。

空に向けてすっくりと伸びる青々とした竹を下から仰ぎ見ると。
竹の葉の間を縫って、空から光が降りてくる。まっすぐに。
そのなんともいえない凄烈さ。

竹林を抜けるとお茶屋があって、そこでお抹茶と和菓子をいただきながら、少し本を読み時を過ごした。いつも。
聞こえてくるのは風に揺すられる竹の葉、そして滝の水音。

この静謐な空気の中にいると。
日々の雑事など、どうということもなくなってしまう。
なんといったらよいだろうか。
そう、時間が止まってしまうという感覚が、そこには本当にあるのだ。
でも一歩、寺の外に出ると、現実が待っている。きちんと。正確に。
街道には車が行き交い、人々が行き来する。明日に続く日常。

帰りがけにはたいてい、ミルクホールか大佛茶廊 に立ち寄る。
ミルクホールでは濃厚なチーズケーキを、大佛茶廊では和菓子を、それぞれコーヒーのお供にする。
そうしてほうっと一息つきながら、日常に戻っていく。

鎌倉の週末。もう随分と昔の話。

#報国寺[鎌倉市浄明寺]