かつて小田原の早川に、
とてもすてきなレストランがあった。

ラ・ナプール。

早川港の目の前にある、小さなフレンチレストラン。
潮の香りが漂うひっそりとした住宅街を抜け、
本当にこんなところにレストランがあるのか?と不安に見舞われはじめた頃に現れるお店。
ゆったりとした店内の居心地がいい椅子に座ると、
大きな窓から青空が見えた。とてもきれいに。

フロアをとりしきるマダムはかわいらしく美しく、
少したどたどしさが残る、けれども好感が持てる若いスタッフたちも微笑ましい。
そして何よりも、シェフの腕が素晴らしかったレストラン。

プレートに対する創造力。素材使いの巧みさ。仕上がった料理の美しさ。
フォアグラにライチと苺のソースを合わせ、フォアグラの持つ旨味を見事に引き出す手腕。その見目うるわしさ。
かさごのポワレといかすみのソース。桃のコンポートとバラのアイスクリーム。

この料理人は天才かもしれない。
そう思わせられたのは、実は初めてのこと。
そしてその後、天恵を感じさせるシェフにはまだ出会えていない。

1時間半かけて行く価値があった店。
それが、ラ・ナプール。
現在のレ・クレアシヨン・ド・ナリサワである。

恐らくは満を持してだろう、南青山への進出。
残念ながらレ・クレアシヨン・ド・ナリサワにはまだ行ったことがないので
いまどんな料理を出してくれるのか、
どんな喜びをもたらしてくれるのかはわからない。

ただ一つだけ言えるのは、
ラ・ナプールというフレンチレストランの名店が
かつてあったという事実。

#ラ・ナプール[早川]
#レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ[南青山]