旅に出てきた。


本当なら今日が出発の予定だったのだけれど、連休中の天気予報がだいぶ変わったため、どうせなら晴れている日にと、予定を早めて行ってきたのだ。


富士山の麓に宿を取る。
パターゴルフをし、ナイトサファリを見て、乗馬をした。


宿の前にあったパターゴルフ場。
半分は時間つぶしだったのにとても楽しかった。
恋人も私も、ほぼパーであがる。上出来。
ゴルフクラブを触ったのは3年ぶりくらいなのに。


そして念願の、今回の旅の目的。ナイトサファリ。
恋人は小学校の時からずっとサファリパークに行きたいと思っていて、そして私は小学校以来の。


夜のどうぶつたちは、神秘的で荘厳なたたずまい。
きりんもしまうまも、名前を知らないどうぶつも。
昼間は所在無げな風情の草食獣たちが、夜はどこかりりしく毅然とした光を放っている。
そして夜の肉食獣たちは、さらに凄みを増している。昼間よりも圧倒的。
暗闇がもたらす本能的な恐怖が、どうぶつである私をより小さく感じさせるのだろうか。


翌日は乗馬をする。
馬に乗るのは初めてなので少し緊張したけれど、30分ほどの練習を経ていよいよ外乗へ。
富士山の裾野に広がる草原を、並足で、ときにギャロップで、馬に乗る。
通り抜ける風、草原の美しい緑、そして背後は富士の山。
温かい日差しの中で、なんとも言えない心地よさ。とても素敵な体験。


世の中にはまだまだ知らない、楽しくて心地いい何かがあるのだと思えた。
新しい何か。


そして恋人は今日からまた旅に出ている。
私は東京に残り仕事をしている。

京都への帰省が中止になった恋人は、時間が空いたため精神鍛錬の旅に出たのだ。
本当に鍛錬してきて欲しいと切に願う。本当に。


恋人といること。
恋人に求めること。


時々迷う。
私が欲しいのは、安心感。安らぎ。静かであたたかな生活。


でも恋人は。
時に私を傷つけるのだ。どうしようもなく深く。
波風を立てるのだ。私の心に。


連休に入ったちょうどその頃から、
また少し、私の心に影を落とすことがあって。
恋人はそれを強く否定するけれど、私は100%信じることはできない。
1ヶ月ほど前の。強く心をえぐられた傷が、まだ私を立ち直らせてくれない。


絶対あらへん、なにを言うてるのや。
大切に思うてへんわけがないやろ。


そう言われても。
あなたが平気な顔をして時々うそをつくことを、私は知っている。


私が大嫌いなうそ。


信じられないのがつらい。
大切なひとのことを信じられない自分が嫌い。
でも信じさせてくれない恋人は?


1ヶ月ほど前のできごとの後に、恋人がくれたメール。

〝もう絶対裏切らんからもう一度信じてほしい〟
そのメールに誓ってもいいという恋人。そのメールをちゃんと保管しているのかと逆に問う恋人。
本当に誓えるの?その言葉にうそはないの?私は疑心暗鬼なだけなの?本当に?

心に浮かぶ、たくさんの疑問符。


このまま一緒にいて良いのだろうか。


旅に出る恋人を見送る休日。

無事に帰ってきて欲しいと、強く願いながら。

少しずつ遠ざかる背中の向こうには五月の青い空。


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