去年の秋、汐留にオフィスが移転した。
それまでは古く汚く空調が壊れかけ
エレベータが全然来ないオフィスビルだったのだが、
今度のビルは最新鋭の設備を整えた新築である。
エレベータなんて20機近くもある。トイレはもちろん全て温水洗浄便座。

しかしそれらすべてを凌駕し私を落胆させ続けているのは
汐留のディズニーランド的食環境の悪さである。
どの店もどの店もどの店もどの店も!
100歩譲ってもそこそこ以上の域を出ない。しかも割高。
それまでは銀座にオフィスがあり、新橋も近かったため
毎日のランチが待ち遠しくて仕方なかったのに。

唯一、良かったことがある。
それは「あさみ」が近くなったこと。

「あさみ」は銀座木挽町の一角にある割烹。
萌黄色に染め抜かれた暖簾をくぐるのに
夜だったら少し勇気がいるお店である。

この店で昼に出される鯛茶漬けが、絶品なのだ。

香り高いごまだれにきちんと漬けられた、
それでいて素材の味が生きている鯛を
ほっこり炊き上げられたご飯の上に載せ、
熱々の茶漬けにしていただく。
天然のわさびがぴりっと利いていて、それはもう絶妙においしい。

もちろん鯛はそのままいただいても良い。
というか、この鯛そのものが素晴らしくおいしいため
そのままいってしまおうか、それとも茶漬けにしようか、
鯛一枚一枚を前に本当に悩んでしまう。

ごまだれってこんなにおいしかったんだ。
鯛とごまってこんなに合うんだ。

お邪魔するたびにそんな感動と
午後の仕事への活力を与えてくれる店である。


#あさみ[銀座木挽町]