広尾のアラジンに行ってきた。
長い間、行ってみたい店リストに名を連ねつつ、なぜかいつも後回にしてしまっていた川崎さんのお店。
やや天井が低い、少し照明を落としたクラシカルな店内はとても落ち着いた雰囲気。
入ってすぐの厨房から、川崎さんが迎えてくれる。
シェフが送ってくれることはあっても、迎えてくれるお店は極めて少ない。
お客ひとりひとりときちんと向き合い、料理でもてなそうという思いが感じられる。
シェフがその気なら、こちらもしっかりと味わおうという気分になる。
いただいたのは、グランドメニューのコース。
キャビアを乗せた白いカリフラワーのババロワがとても良い。
本当はキャビアはそんなに好きではないのだけれど、カリフラワーをしっかりと引き立てていて口に合う。
そしてオマール海老を白菜で包んだプレート、フォアグラと根セロリのピューレーと続く。
白菜のプレートに散らしたバルサミコソースがぴりっと効いているし、セロリとフォアグラの相性もいい。
本日の魚はいさきのポワレ。そして肉料理に選んだイベリコ豚のグリエが良かった。
とろけるようなイベリコ豚に、網の目がこんがりついてジューシーな仕上がり。
口直しのイチゴのカクテルには、ミントを入れたメレンゲがふんわり。
最後のあつあつのスイートポテトタルト、紫芋のアイスも味わい深い。
お店を出るときには、また川崎さんが見送ってくれる。
正直言って、少し驚いた。
川崎さんともなると、出迎えや見送りなどしないと思い込んでいたから。
お客と直に接する時間を持つシェフの姿勢が、いい店をつくる条件ではない。もちろん。
シェフが料理を通して店の顔をつくり、
メーテルドテルやグランドスタッフがサービスの顔をつくる。
その絶妙なバランスで魅せるお店もたくさんあるし、
例えばル・マンジュ・トゥー
のように、ひたむきに料理にのみ向き合うシェフも素晴らしいと思う。
ただし本音を言えば。
シェフの顔を見てみたいと思う。
どんな人が今日の料理を作ってくれているのか、あるいは作ってくれたのか。知りたいと思う。
料理はシェフの人柄と切っても切れないし、シェフとスタッフ、そしてレストランの雰囲気は密接に関係する。
特に素晴らしい料理に出会えたときには、こんな素敵な料理をつくるシェフに是非会いたい。そして心からのお礼を言いたい。
見送って下さった川崎さんに。
とてもおいしかったということ、楽しい夜を過ごせたということをお伝えして店を後にする。
アラジン。行ってよかった店のリストに変更。