年に一度は、関西に遊びに行っている。
たいてい京都を拠点に大阪に足を伸ばす形になるのだが、
去年は久々に神戸に寄ってきた。

目的はひとつ。
元町ケーキのざくろを食べに。

元町ケーキは1947年に創業したという、いわゆる街のケーキ屋さん。
生クリームと苺を外側のスポンジがくるりとくるんだ形がざくろのように見えるそのケーキは、神戸で育った人なら知らない人はいない味なのだとか。
そんな雑誌のコメントと、そのあまりのおいしそうな外見に魅了されてしまったのだ。

私がお邪魔したのは、元町通にある本店。
朝寝坊をした上、街をぶらぶらしてからお店に到着したのは午後4時過ぎだったろうか。なんとショーケースにラスト1個のざくろ。危ない危ない。

そして初めて味わうざくろは。

焼き目が少し入った、力強いけれどふわふわのスポンジ。
甘すぎず、しっかりした生クリーム。
そして甘酸っぱい苺の上に、さらさらほんのりの粉砂糖。
お酒や香料がまったく入っていない、シンプルそのものの味。


この味は、どこかで食べた味。
舌の先にほんのり記憶がある。懐かしい味の記憶。
でも今はどこにもない。
そう。多分これは昭和の味なのだ。ケーキが少し特別な食べ物だった頃の。
子供の頃に食べた、おいしいと思ったケーキのエッセンスがすべてこの一個に凝縮されている。


そんなふうに言えばいいだろうか。

懐かしい記憶に胸がいっぱいになる。
そんな素敵なケーキ屋さんががまだ残る街、神戸。

#元町ケーキ[神戸 元町通]