大学の後輩とフランス映画祭に行ってきた。
土曜日の夕方。
後輩といっても、彼は私が卒業した後に大学に入ってきたので、
初めて会って話したのは去年の年末、みんなで飲みに行ったときのことだ。
年の瀬の夜に、最後まで残った幾人かで映画や本や音楽の話をした。朝まで。その中に、彼がいた。そして私も。
たとえば自分がいいなと思った映画や本や音楽を気にせずにすすめられる。
たとえば相手がいいなと言ったそれらについて愛想ではなくいいなと思える。
その後輩は、そんな数少ないひとりだ。
だいたいにして心の所作にかかわる類のものを人にすすめるのは勇気がいることだけれど。
でも彼に関しては大丈夫。そんな気がしている。きっとお互いに。
感じる心が近いんだろうなと思う。そういう人は時々いる。
男性とか女性とか年齢とかにかかわらず。
そして後輩は、私が恋人との関係に悩んでいた時に、素敵なメッセージでそうっと励ましてくれた人でもある。泣きたくなるくらいあたたかいメールと音楽で。
土曜日に見た映画は。
なんというかまあ。
これぞフランス映画!という感じの映画で。
ちなみに私のなかでフランス映画は2種類あって、それは一生忘れられない映画と、ある意味一生忘れられない映画、で。
その映画は間違いなく後者にあたる部類のものだった。
そして後輩も同じ感想を抱いていたことに安心し、安心してそのある意味忘れられない映画について話す。
(ここからはその映画のことを少し書くので、見る予定のひとは読まないで下さい。The beat that my heart skipped (仮題)という映画です)
あのいきなりの〝2年後〟っていうのはどうよとか、
中国人のピアノ教師との徒然が丹念に描かれているのかと思っていたとか、
でもその教師との言葉が通じないやりとりは良かったとか、
主人公のお父さんが殺されていたのは案の定だとか、
主人公が人殺しをしなくて良かったとか、
そんなことを。
ともあれ。
後輩との夜はとても楽しかった。楽しくて穏やかな気持ち。
映画に行く前に幾つかハプニングもあったけれど(彼の彼女が出掛けに自宅を急襲したのだそうだ。普段は必ず事前に連絡をしてくる子なのに。虫の知らせだろうか?浮気でもなんでもないんだけどな)。
それもあって急遽フレンチからヴェトナム料理に変更した晩ご飯も、
映画のあいだに飲んだコーヒーも良かった。
映画館のコーヒーがおいしいというのは極めて稀なことだ。
失踪の話も、プールの監視員のアルバイトの話も、好きな映画の話も、知り合いの奇行の話も楽しかった。
ずっと貸すことになっていたダヴィンチ・コードも半年越しに渡せた。
映画の後に余韻を楽しまずに帰るのもまったくつまらない話なので、
本当はバーにでも寄ろうかと思っていたのだけれど。
でも彼の彼女がまだ家にいたらかわいそうだしな、などと思い、先輩らしくちょっと遠慮してみた(実際には遠慮する必要はなかったらしいのだけれど)。
映画祭の夜に得た教訓は3つ。
虫の知らせは本当にある。
フランス映画は基本的に微妙である。
そして素敵な映画や本や音楽を見つけたら、その後輩にはやっぱりきっと教えてあげよう。ということ。