料理は食べるのもつくるのも大好きだ。

エンゲル係数の高さはさすがに否定しないけれど、毎晩フレンチを食べ歩いているわけでも、高級なものにしか興味がないわけでもない。もちろん。

 

いちばん好きなのは、やっぱり家でつくって食べる料理。
どこよりもいちばん落ち着く空間で、好きな食材と味付けで食べる料理。

 

当然、家ではフレンチなんて作らない。
そんなのは外で食べた方がおいしいに決まっているし、
だいたいきちんとしたフレンチは、それなりの場所で、丁寧にサーブしてもらうからこそおいしいのだ。
自分でスプンやフォークやナイフを並べてしまったら、せせこましい気分になるではないか。
そしてそんな気分はフレンチには似合わない。

家で作るなら。やっぱり和食、ぱぱっと作れる中華、そして韓国料理、あくまで簡単なイタリアン。

 

さて、家庭料理である。
家庭料理とはすなわち自分の家の料理であって、誰かの家の料理ではない。
おいしい料理と出会うと、そのエッセンスを少しいただいて再現する。
作ってみておいしければまた作る。定着する。
そして生まれる、新たな家庭料理。

でも実際に真似したくなる料理を出す店はそんなにない。
そういう意味で秀逸なのは、銀座にあるくらのすけ。
雑居ビルの中にある、ちょっとした居酒屋。

 

ここの惣菜がとてもおいしい。
有機かぼちゃのサラダ、牛蒡の唐揚、などの定番料理にはじまり、
この季節ならそら豆のビール揚げ、たけのこの木の芽味噌焼きがいい。
いつかどこかで食べた料理。あるいは作ったことのある。
でもくらのすけの惣菜には、どうしても完全に再現できない何かが必ずある。
それは例えば素材の使い方、活かし方、見せ方、味付け。そのすべて、あるいはいずれか。
ちょっとした匙加減が効いているのだ。

ただ味が良ければ許される、その対極にあるとても丁寧な料理たち。

 

もちろんそれなりに高いお金を出すお店なら、それは当然のこと。
けれどここはくらのすけ。だからこそ素晴らしいと思う。

 

ちなみにこのお店、7~8年前までは銀座の小さなビルにあるとても小さな飲み屋だった。
そしてその頃から、匙加減のいい、丁寧な料理を出してくれた。いつも変わらない気持ちのいい応対と一緒に。
築地に住む笑顔が爽やかな兄弟たちが営むお店。
それから数年、今や銀座で4軒の店を持つ。

 

当然のこと、と私は思う。
だってここは、くらのすけなんだから。

 

#くらのすけ[銀座]