レ・ミゼラブル
・監督:トム・フーパー
・脚本: ウィリアム・ニコルソン 、アラン・ブーブリル 、クロード=ミシェル・シェーンベルク 、ハーバート・クレッツマー
・出演:ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、エディ・レッドメイン、ヘレナ・ボナム・カーター、イザベル・アレン、サマンサ・バークス、アーロン・トヴェイト
法の下で19年も奴隷となっていたバルジャンの生涯を描いたミュージカル映画。
最高の作品。私の観た中でもベスト3にはいるだろう。忘れたくないし、思いだしたいのでこの文章は長くなるだろる。
ほぼ全編ミュージカルテイスト、つまり役者たちが歌って演じている。頭の中で思っていることを口に出して表現することが面白く、歌のリズムとセリフの意味、言い方、この3つがきちんとしてないとミューjカル映画は成り立たないが、この映画はそれが完璧だった。
まず、冒頭のバルジャンが奴隷として船を引いてるシーン。いきなりの迫力ある大波のシーンに私は引き込まれ、さらに奴隷の悲しさを表した歌ながらその壮大な歌に魅了された。ヒュー・ジャックマンの不潔そうな姿に最初は本当に彼か?と疑問に思ってしまうほど囚人になりきっていた。バルジャンはここで初めてジャベールと出会うんだが、この二人の言い合いも見もの!迫力ある喧嘩を感じることができる。ラッセル・クロウが永田祐志に似てるなと思った。仮出所したバルジャンだが、身分証のせいで仕事にありつけない。このシーンの悲壮感っぷりはやばい。殴られ、馬鹿にされ、目を覆いたくなる。その後司教に拾われ、彼は変わろうと決心する。
時がたち、身分を変え、市長にまでなったバルジャンの街にジャベールが赴任してくる。バルジャンの動揺もあってか無実の女性、ファンテーヌがバルジャンの工場を首になり、身売りの身を落とすことになる。
工場でのファンテーヌには少し違和感を感じた。なぜ彼女だけピンクの派手な服装なのか。目立ちたくないようだったのに、あの色は目立つだろう。
ファンテーヌは娘を助けるお金のため綺麗な髪を切り落とされ、奥歯も抜く羽目になる。そしてとうとう男と寝る羽目になる。ここでアン・ハサウェイの歌唱力に驚愕した。こうなった自分を悲しむ歌だが、その表情と歌声に思わず声を出しそうになった。これが初のミュージカルだとは思えない。「私の未来はこんなはずじゃなかった」というセリフが印象的だった。ファンテーヌはバルジャンによって助け出されるが、すぐに亡くなってしまう。主要キャストだが、こんなに早く出番が終わるとは思わず、切なかった。
バルジャンはファンテーヌへの後悔と償いから彼女の子コゼットを預かろうと考えたが、自分の代わりにバルジャンが捕まったとジャベールから聞き、どうするべきか悩む。ここのヒュー・ジャックマンみすごい。悩みに悩んでそして法廷に行ってしまう、その葛藤は見もの!
コゼットが預けられている宿屋の夫婦はなかなかのくずっぷり。訪れた客から財布をすり、髪飾りをすり、子供にまで手伝わさせる。だが、音楽が非常に明るいリズムで、夫婦もノリの良く、暗いイメージをさせないギャグという形に収まっている。マダム・テナルディエがコゼットをいびっていた時は、さすがヘレナ・ボナム・カーターと思った。「ハリーポッター」で演じた悪い魔法使いベラトリックスに通じるものがあった。
テナルディエを演じたサシャ・バロン・コーエンも喜劇が似合いそうな顔でこのひょうきんな子悪党は似合っていた。
さて、ついに登場したコゼット。演じたのはイザベル・アレン。これが初映画だそうです。とてもそうは思えないほどの演技力で魅了されました。まず歌が本当にうまい。子供ながら自分の悲しい心情をひっそりと歌い上げている。そしてなによりも美人さんです。昔のダコタ・ファニングに似てる気もする。大人びた美人顔なんだが、バルジャンが「パパにもママにもあんる」と言った時のうれしそうな顔は子供らしさをこんじれてすごくよかった。
そこからジャベールに追われ、逃げて、時がたつ。
コゼットは美しい女性へと成長した。成長したコゼットを演じるのはアマンダ・セイフライドだ。目が大きいのが特徴でほんとうにかわいらしい。どうやってかバルジャンは裕福らしく、コゼットと共に恵まれない人にお金(?)を恵んでいた。一方、その街ではアンジョルラスとマリウスを代表に学生たちが革命を起こそうとしていた。そしてその街にはあのテナルディエ夫妻とその娘エポニーヌがいた。落ちぶれたようだが、あいかわらずスリのようなことをしている。そしてあのジャベールもいた。
そんな中、マリウスとコゼットはお互い一目ぼれしてしまう。ここからのマリウスの隠さない自分の気持ちが素敵だ。コゼットを探すのにエポニーヌを使うのは男としてどうかと思うがその素直さは素敵だ。エポニーヌはマリウスが好きなのだが、マリウスの目に自分は映らないことを知っていた。マリウスが喜ぶならとコゼットの場所を教える。二人を見ながらエポニーヌはどうしようもない状況と愛を歌うのだ。このエポニーヌがまた幸が薄そうでこの役に合っていた。この役はあのテイラー・スウィフトも受けていたという話を聞き、彼女が選ばれたのが納得した。テイラーじゃきれいすぎるというか、落ちぶれた役は似合わないだろう。ジャベールに見つかることを恐れたバルジャンは引っ越そうとする。コゼットはマリウスに手紙を残した。この手紙はエポニーヌが手に入れ、保管していた。
一方、マリウスは戦うべきか、彼女を追うべきかで葛藤していた。学生たちのリーダーであるアンジョルラスは戦うことを心に決めていてまっすぐな目をしている。マリウスの悩みも当然だ。「きみと出会って死になくなくなった」と歌っているが、その通りだが思う。こういう言葉を素直に言うところが洋画の良さだと思う。マリウスは戦うことを決め、ガブローシュに手紙をコゼットに届けるように言う。このガブローシュが個人的にとても好きだ。時が経った初めのシーンで登場するのがこのガブリローシュだった。スリをしながら町を走り回り、救われない現状を歌う。歌はそれほどうまいとは思えなかったが、引き付けられるなにかがあった。
いざ、革命のための学生と警備隊の衝突が始まった。学生たちはバリケードを張ったが、警備隊には敵うわけもなく、市民の協力もなかった。エポニーヌはマイルスを庇い、敵の銃口を自分い向け撃たれた。マリウスは彼女を思い、彼女の額にキスをした。その後、学生の中に絶望がただようなか、ガブローシュは歌いながら皆を鼓舞した。彼はバリケードを越えて敵をなにか伝えるように歌う。そして敵の弾丸に倒れてしまう。後にジャベールが彼の体に紋章をtケルシーンがある。彼の行動に敬意を払ってのことだろう。彼の死を悲しみながらもそこから一斉に戦争になった。やはり学生に勝ち目はなく、血が流れていく。マリウス撃たれ、倒れてしまう。それを助けたのはバルジャンだった。バルジャンはガブローシュが届けた手紙を読み、コゼットがいなくなってしまうと恐れた。そしてマリウスが生きるか、死ぬかを見届けるために現場にいたのだ。一方、ジャベールは学生の動きを読むために潜入していたが、ガブローシュに見破られ、捕まっていた。バルジャンは彼を解放する。撃たれたマリウスを助けるため下水道にもぐり、そこでテナルディエに会うも、なんとか下水を笛出る。待ってていたのはジャベールだった。彼はバルジャンを捕まえるというが、最後までできなかった。ジャベールは法こそが正義と考えていたが、バルジャンに助けられて事で本当の正義が何なのかわからなくなった。考えた末ん彼がとった行動は自決だった。ここのジェベールの葛藤も実に見ものだ!ずっと追ってきた敵に助けられ、自分の根幹も揺るぎ、彼には何も残っていなかった。憎らしい男だが、最後は同情してしまうほど悲しく、哀れだった。
マリウスは何とか助かったが、アンジョルラスと別な学生は警備隊の前に立ち手をかざす。その瞬間撃たれるもアンジョルラスは倒れた拍子に窓から革命の証の赤い旗を見せつけることができた。マリウスは悲しむが、その隣にはコゼットがいた。コゼットの献身的な支えで彼は立ち直ることができた。一目ぼれから始まったが、ここまで良い関係になるのは夢のようだが、いいものだと感じた。バルジャンは彼を認め、そして結婚も認める。マリウスを呼び出した彼はコゼットにも隠していた過去を話し、旅に出ることを伝える。会うと別れがつらくなる、そして悲しませたくないから過去の話も旅立つ話もコゼットには言うなと。バルジャンがいなくなり悲しむコゼットだったが、今度はマリウスが彼女を支える。そして迎えた結婚式。毎度のようにテナルディエ夫妻がスリをしていた。マリウスが彼らを追い出すが、その時、自分を助けたのはバルジャンだと知る。バルジャンが今住んでる場所をしったマリウスはコゼットを連れてその教会に行く。弱っていたバルジャンの前にファンテーヌが現れる。「あなたは神の元に行ける」と語るファンテーヌ、ラストにまた出てくるあたりがさすがの演出である。天使の迎えのようなものかもで、その言葉を聞いたバルジャンもどことなく嬉しそうだった。そして彼の前にマリウスとコゼットが訪れる。最後は大切な人たちに囲まれたバルジャンはファンテーヌに行く先を教えられ、歩いていく。泣くコゼットのバルジャンへの思いが込み上げているのが感じられる。ファンテーヌは道を示した後コゼットの方を見つめる。姿を見せることはできないが、成長した娘をみて何か感じていただろう。
神の元に行ったバルジャンが観たものは革命に成功する学生たちだった。その中にはアンジョルラスやエポニーヌの姿もおり、彼らはそこで念願の自由な生活を手に入れることができたのだ。そして19年も奴隷だったバルジャンもその生活が憧れだったのだ。
うーん、長く書いてしまったが、やはり最高の映画だ。これはぜひ映画館で観てほしい。もちろんDVDでもいいだろうが、映画館独特の臨場感で観た方が心にしみるだろう。何度も言うが最高の映画である!!
ヒュー・ジャックマン。抜群の演技力、歌唱力を披露。囚人のみすぼらしい姿から市長としてのきれいな
姿、亡くなる時の儚げな雰囲気、全て同じ役者とは思えないほど違う雰囲気を出していて、メイクの素晴らしさと共に彼の演技の幅の広さを感じた。「ニューヨークの恋人」での英国紳士とは全く違う役で、初めは違和感を覚えたが、今回の役はかれの代表となるだろう。
ラッセル・クロウ。威厳ある雰囲気、そして迫力ある声、言い方でバルジャンを追い詰めるジャベールを好演。歌唱力はそれほどではないが、やはり演技力は素晴らしい。
アン・ハサウェイ。私が観た映画の彼女はどれも幸が薄い役だったので、今回もすんなりは入れたが、やはり目の大きさ、と綺麗な顔立ちは目立つ。幸が薄い女性を本当に見事に演じた。歌唱力も素晴らしく、泣きながら歌う姿は今も心に残っている。髪を切るなどこの役に対する思いも感じれた。序盤と終盤という要所をしっかり引き締めてくれた
アマンダ・セイフライド。こちらはアン・ハサウェイとは対照的に明るい雰囲気が合っている。彼女の澄んでいる目は見ていて思わずうっとりしてしまう。歌唱力も素晴らしく、高音がきれいだった。ラストのバルジャンを見送るシーンでみせる表情は切なさと感謝の両方を感じることができた。
エディ・レッドメイン。「イエローハンカチーフ」ではさえない若者役だったが、今回はかっこよく、勇敢な好青年を好演。彼の素直そうな表情からは一途な愛を感じることができる。
ヘレナ・ボナム・カーター。意地悪な女性を演じたら彼女の右に出る者はいないだろう。だが、今回はギャグの担当と言わんばかりに、スリをしているのに歌にダンスに明るく、振る舞い、暗い雰囲気を打ち消してもいる。
イザベル・アレン。これが初映画だとは思えないほどの演技力。私の中での子役はダコタ・ファニング、マッケンジー・フォイだったが、この子も今後注目の子役だろう。いじめられているときの暗い表情とバルジャンに会ってからの嬉しそうな表情、その差がこの物語では大切だった。歌唱力もすごい。綺麗な歌声だった。
サマンサ・バークス。こちらも幸が薄い女性である。その儚さを表現できる顔立ちで、彼女の叶わぬ恋を表していた。最後までマリウスを思い続ける姿は心に響く。
アーロン・トヴェイト。見た目もかっこよく、学生を引っ張るリーダーを好演。彼の見せ場なんといっても「敵に背を向けず、自分の行動を誇りに思うかのようなふるまいのまま撃たれるシーン。倒れても赤いはたが広がる様子はいつか革命できる日が来ると言っているみたいだった。
サシャ・バロン・コーエン。ヘレナ・ボナム・カーターと二人で一つで明るいいキャラクターを演じた。彼のノリの良さがここまでのキャラを作り上げ、映画に欠かせないファニー要素となったのだが、その役にまさにぴったりだった。