彼岸花から学ぶ | ♫ラジオ寺子屋・高野山♫ 南山坊のブログ

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つきぬけて 天上の紺 曼珠沙華
            山口誓子



彼岸花・曼珠沙華ほど異名を持つ植物はないでしょう。
盆花・地獄花・イットキ花・アカノハナ・テンガイバナ・ハヌケグサ・ホトケバナ・カンザシバナ・ソーシキバナ・ユーレイバナ・ハカバナなどなど。

ここに挙げたのはごく一部で全国に300近くの呼ばれ方があります。
一説には1000程とも・・といわれますが、それらの名称から仏法と縁の深い花ということに気づきます。



そもそも、曼珠沙華は四種天華(曼荼羅華・摩訶曼荼羅華・曼珠沙華・摩訶曼珠沙華)のひとつで、天上から降り注ぐ天界の花です。

釈尊が法を説き終わった時に天から降ったことが仏典に記されており、曼荼羅花は白い花、曼珠沙華は赤い花ですが仏典にはその形や特徴までは説かれていないようです。

わが国では古くから彼岸花を曼珠沙華としていますが、仏教が起こったインドでは自生していないので、かの地では別の植物を指していたことが想像できます。

このように仏さまに縁深きありがたい花の一方、地獄花や幽霊花、葬式花、墓花などと忌み嫌われることもあります。
何故ならこの花に毒があることから、かつて墓地に植えられて害獣から土葬の遺体を守る役割を与えられたことから死のイメージがついたのでしょう。

また今でも田畑に群生しているのは同じように作物を獣から守るために植えら、飢餓の時は毒を洗い出して救荒植物(非常食)としての一面も昔はあったようです。

実際に薬の原料にも使われているので、まさに毒と薬は紙一重です。
ものごとを対立的に捉えるのではなく、不二(フニ)つまり、ふたつにあらず、平たくいうとニコイチ的に捉えてみることが密教の特徴でもあります。

秋の彼岸になると誰にいわれるまでもなく咲く彼岸花から学びました。



参考文献
『仏教植物散策』中村元編
『ヒガンバナのひみつ』かこさとし作