[前回]

 


 店に入り、長芋を探す。幸運にも最後の一本を手に入れることができた。醤油と米を買い物カゴに入れて、すでに四人ほどが列を作るレジに並ぶ。

「幸雄じゃん」突然、名前を呼ばれ、鼓動が速くなる。
「潤」中学時代の級友が前に並んでいた。
「幸雄はまだ生き残ってたんだな」潤は中学生の頃から変わらぬ端正な顔で話しかけてくる。

 やはり、こういう男になったんだな、と僕は憎悪の声を洩らしそうになる。昔から、彼は誰よりも容姿端麗で、手足が長く、艶のある黒い髪は男女問わず周囲の人間を魅了していた。昔は短髪だったが、目の前いる潤は髪を伸ばし、緩いパーマをかけており、それがまた似合っていた。
「ああ、かろうじて」他意はない発言だっただろうが、生き残っていた、という言葉が、見下すように僕に降りかかった気がした。