[前回]
レジに合計金額が表示され、潤は会計を済ませる。
「じゃあな、幸雄」そう言って立ち去ろうとした潤が急に振り返り、「おまえ、彼女はいるか?」と訊いてきた。
僕は虚を突かれた。潤のような人間は躊躇なく、こういう質問を投げてくる。
「いや、いないよ」
「今までは?」
「いないかな」億劫な気持ちで答えを返すと、「そうか」と、潤は眉をひそめる。「寂しいだろ」潤はレジから離れようとしない。「彼女を作れず終わるなんて」
居心地の悪さを感じながら、「いや、まあ、どうだろう」と僕は曖昧に返事をした。
またな、と言い残し、潤は店を出る。店の前には綺麗な黒髪をした、人形のような女性がおり、潤に近寄ると、二人は手を繋ぎながら遠ざかっていった。