政府は9日、数値目標付きの節電を今夏は各地域に要請しない方向で検討に入った。



家庭や企業での節電定着に加え、電力各社が他社からの応援融通などを生かして
必要な供給力を確保できる見通しになったためだ。ただ関西と九州では予備率
(最大需要に対する供給余力)が安定供給に最低限必要な3%程度にとどまる。
景気回復で電力需要が増える可能性もあり、
節電意識の緩みが電力不足につながりかねない。

 数値目標付きの節電が全国で見送られれば、東日本大震災以降では初めて。

 9日に開かれた経済産業省の電力需給検証小委員会では、
沖縄電力を除く電力9社の需給見通しが示された。
暑さが厳しい8月の予備率が全国で6.3%となり、
3%以上を確保できる見通しとなった。

 このため、政府は節電の数値目標を設けず、一般的な節電要請にとどめる見通し。
4月中に最終決定する。

 一方、数値目標の見送りが濃厚になったことで、
電力各社は突発的な電力不足に警戒を強めている。

 火力発電所の多重トラブルに加え、今夏はアベノミクスによる景気回復で
工場などで使う電力が増えたり、数値目標を設けないことで節電意識が緩んだりして、
電力需要が想定を上回る可能性があるからだ。

 各社の予備率は、北海道と中国が10.5%と比較的高いものの、
昨夏に10%の数値目標が付いた関西と九州はそれぞれ3.0%、3.1%と低水準にとどまる。

 関西は、大飯原発(福井県)3、4号機が定期検査に入る9月まで稼働できる見通しのほか、
夜間の余剰電力でくみ上げた水を用いる「揚水発電」の稼働も大幅に増やす計画だ。

 とはいえ8月のピーク時の供給余力は87万キロワットにとどまる。
原発を除けば管内で最も出力が大きい京都府の舞鶴発電所1、2号機
(石炭火力、出力各90万キロワット)など複数の火力発電所がトラブルを起こせば
余力は底を尽きかねない。関西の担当者は「厳しい状況に変わりはない」と訴える。

 九州も、関西に回っていた他電力からの融通分で供給力を補うにすぎない。

 各社とも、定期点検の先延ばしや老朽化した火力発電所の活用などで急場をしのいでおり、
「国民の節電意識に頼っている限り、根本的な解決にはならない」(電力大手幹部)のが実情だ。
原発の再稼働が各地で進むまで、電力会社にとっては気の抜けない日々が続きそうだ。



産経新聞:4月10日(水)8時15分