ドラムセットがステージより一段高く置かれてる。
ドラム、後ろの人にもよく見えるね。
嬉しいな。そんな風に思っていたらいつものSE。
ステージ袖から気合入れの声が聞こえた。
ああ、最後なんだ。改めて思う。
楽しむこと、見届けること、笑うこと。
力いっぱい自分に約束してここまで来た。
にこにこと登場するメンバー。
ここに来れなかったファン全員分の想いを背負って立っている。
佐藤さんが客席を見渡す。目が合った気がした。ええと、こんばんは(笑
最後の、ライブが始まる。
・SUPER Y
いきなり始まった手拍子。佐藤さんが、橋谷さんが、客席に促す。
「目の前に立つディフェンス!」で激しくなる手拍子。
一発目のサビで、爆発した。
高く、高く飛ぶグローバーさん。思いっきり拳を突き上げる観客。
天井が高くて結構広いこのハコの空気がJackson vibeに掌握された瞬間。
熱がステージから放たれる。圧倒的な存在感で4人が立ってた。
ギターソロ、橋谷さんが暴れる。初期衝動のままに走る。
そして、もっちゃんのドラムソロ。
グローバーさんが、もっちゃんを見る。焼き付けるように、見届けるように。
心の底から気持ちよさそうなもっちゃん。
もっちゃんにしか叩けないソロ。もっちゃんにしか産み出せない音。
最後の一音をバシッと決めて、ぴたりと音がやんで。
にっこり笑ってもっちゃんがスティックを投げた。
それが合図とばかりにサビは飛びまくった。みんな飛んでた。
あれだけやられて熱くならない客はいない。
今日のライブも絶対最高だって、もうここで決まったようなもんだ。
・愛のうた
心底楽しそうなメンバーにつられて手ががんがん挙がる。
Jackson vibeが愛されてるのは、
誰よりも幸せそうに音を鳴らすからだって改めて思った。
橋谷さんのギターソロの得意気な顔とか
グローバーさんの客席見る笑顔とか、
佐藤さんともっちゃんが顔見合わせて笑うとことか
ああもうすげー青春だよなあとしみじみ思う。死ぬまで思春期。
どこまでもあったかくて分厚い音が、高知に響く。
・バスにとびのれ
Jackson vibeらしい疾走感に溢れた曲。
oioiコールもいつも通り客席皆で大合唱。
この曲を聴くと心が走る。心が逸る。
もっと、もっと、もっと、前へ!
大サビ前のフィルイン、いつもこの瞬間は鳥肌が立つ。
スネアとフロア、バスドラを力いっぱい叩いて熱が爆発する。
一瞬、時が止まったようなそんな感覚。
グローバーさんの声で時間がすぐに動き出す。
「とびのれ」と力強く唄うグローバーさんが凄く印象的だった。
・未来少年
この曲の歌詞が今日ほど沁みることはないだろうと思った。
前の曲が終わって、すぐにイヤホンをつけるもっちゃん。
カウントを取って、印象的なあのイントロが流れ出す。
橋谷さんが一瞬真顔に戻った。
すぐに笑顔になったけど、不意に、凄く淋しそうな目をするね。
確かめるように唄うグローバーさん。
この曲を初めて聴いたのは、ジャンボツアーのファイナルだった。
まだタイトルさえない時で、それでも物凄く好きだと思った。
胸が痛くてどうしようもなかった。心が走って泣き出しそうだった。
あの日と同じように、今、胸が痛い。
「朝は来なくていいよ」
確かめるようにベースを弾く佐藤さんと、それを見るもっちゃん。
ジャンボツアーの時にはなかった気がするアウトロ。
もっちゃんが手数王になる瞬間(笑
一音一音はっきり聴こえた。
グローバーさんが、その音を全部背中に受けてた。
ここでMC。メンバー紹介。
先を考えずにモヒカンにした橋谷さんが辮髪だモンゴルだと言われ
佐藤さんに至っては小太り呼ばわり。
とどめにもっちゃんは
「今日、空港で機材をカートに載せて移動しまして。片付けは最初よりも綺麗に、が
信条の僕はゴミを捨てながらカートをしまいに行っていたのですが、
戻ると機材車が今まさに走り出してですね。慌てて電話かけて追ったんですけど
凄くあっさりと遠ざかっていってですね、こんなんで大丈夫なのかと…
今、この空気こそ大丈夫か?」
…絶対にダメだと思います(笑
ごめん、爆笑しちゃったよ。どうしていつだってそんな役回り。
そして最後にそんなトークぶちかましてくれるんだろう。
佐藤さん、苦笑してました。ああくそ。愛しいなあ。この光景。
・LIFE
新曲。グローバーさんのギターと唄から始まる。
一発目のサビ、「Stand up baby, Standby now」を
もっちゃんが一生懸命唄ってた。「LIFE」の連呼は叫ぶように唄ってた。
「僕と君を繋ぐ情熱」
ああ、今日は言葉の欠片が突き刺さってばかりだ。
言霊と言う言葉を思い出す。
心は言葉に包まれて、なんて歌を思い出す。
グローバーさんの魂が、唄う。
今唄わなきゃ死ぬんじゃないかってくらいの迫力で、
剥き出しの魂がそこで熱を放ってる。
・GOD OF MUSIC
4人に後ろから当てられたオレンジのライト。
ああ、去年の東邦の学園祭と同じ演出だ。
ライトが眩しくて、4人の表情が見えない。
ただ、もっちゃんのあのドラムの音が聴こえる。
神様がいると思った。神様が、そこにいるって。
フラカンのけいすけが、
「ライブで永遠を感じる瞬間がある。それを感じたくてライブをやってる。」
そんなことをAXで言ってた。
私にとって、今この瞬間が永遠だと思った。奇跡の瞬間。心が震えた。
一発目のフィルインで、もっちゃんの熱が爆発した。
皆で「ららら」って唄った。もっちゃんが楽しそうだった。
グローバーが気持ちよさそうだった。
橋谷さんが笑ってた。佐藤さんがこっちを見た。
・朝焼けの旅路
最後のカウント。思いっきり声を上げた。
上げないと泣きそうだった。
4人の笑顔に無理がでてきてた(笑
力いっぱい泣かないって決めてきたのはメンバーも同じだったんだろう。
楽しくて仕方ないのに泣きたくなるのはどうしようもない。
どうしようもない淋しさを従えたまま皆ここに来てて、
それでもここにいることは楽しくて幸せでどうしようもない。
パラドックスは、全部ほんとの心だ。
大サビ前、
「もう戻れない 駆け抜けた道は ここにある 何が見えた」
いつもならそのライブ会場の地名に
変えるところを「ここにある」と右足をだん、と踏みしめて、
右手で力強く足元を指差して歌ったときに
グローバーさんがこの曲をもっちゃんの為だけに歌ってるんだと思った。
そして、改めて今日ここにいる意味と、想いを噛み締めた。
皆が同じ想いと熱を共有してた。
誰もが皆を大好きで、誰もが皆を愛しくて、
誰もがライブを楽しみたくて、誰もが笑顔でまたねと言いたい。
メンバーも、ファンも、同じ熱を共有できるライブはきっと稀有だ。
そんな幸せな場所にいられて嬉しくて仕方がないのに
どうしてこんなに切ないんだろう。
ここでもう一度MC…に入ろうとして、
グローバーさんが鼻セレブを取りにアンプのとこまで下がった。
橋谷さんに手で「よろしく」ってMCを促した。
前を、向けないグローバーさんがそこにいた。
困ったように笑って「元気ですかー!」と言った橋谷さんの声が涙声だった。
もっちゃんも、泣いてた。佐藤さんも、肩が震えてた。
だめだだめだ。皆同じ気持ちでいるから。
メンバーが泣いたら私達皆泣いちゃうよ。
・MUSIC FREAKS
全員が泣きながら、それでも笑顔で唄った。
涙は止まらなかった。それでも顔を上げ続けた。
最後の「ららら」は全員で叫んでた。全力で唄ってた。
アウトロのグローバーさんのシャウト、
終わらせたくないって、そんな叫びだった。
アンコールの前に、もっちゃんが一人で出てきた。
もっちゃんが、下北で私がタムラさんに渡した「GUTS FOREVER」Tシャツを着てて驚いた。
ああ、最後の瞬間にちゃんと想いを携えてくれたんだ。
ステージ袖に出てきたメンバーも、皆おそろいで着てくれてた。
凄く個人的なことだけれど、私にとってこれは奇跡だった。
話を始めようとして、涙で詰まって一歩下がった。
深く息を吐いて、もっちゃんが話しはじめる。
「今日は泣かないで笑顔でやろうって言ってたのに、このザマです(笑
大の大人4人が悩んで迷って決めたことなのに。
それでも、やっぱりやめたくないって思っちゃうね。
だけど、一生懸命悩んで、皆で話して、それで前を向いて決めました。
この4年間凄く楽しくて、Jackson vibeにいて大好きな曲が沢山生まれました。
僕はJackson vibeが大好きです。3人ともほんとにいいやつなんです。
…いいやつそうに見えるでしょ?(笑
僕はJackson vibeを離れるけれど、僕らは4人とも音楽を続けます。
3人を、Jackson vibeを見て僕もがんばります。
みんなも、これからもJackson vibeを見ていて下さい。
また、会いましょう。」
グローバーさんが、タオルで顔を隠して床に伏せてた。
もっちゃんを見れなくなってた。
橋谷さんは、頷きながらやっぱり泣いてて、
佐藤さんは静かにもっちゃんを見つめてた。多分、涙流れてた。
最後の最後で淋しさを隠さずにいてくれた。
だからこそ、前に進む想いは確かなものだと思えた。
そして、「バイバイ」が「またね」になった。
「もう少し曲をやらせてください。笑顔で音楽やりましょう。」
もっちゃんの言葉で出てきた3人は、鼻とか赤かったけれど涙はなかった。
ちゃんと、笑って。それでアンコール。
・案ずるな
ここでこの曲が出てくるところがこのバンドが最高な所以だよ。
涙でぐちゃぐちゃだけど凄い笑顔。
思いっきり飛んで、拳突き上げて。
どうしようもなく楽しくて幸せ。
「楽勝だ 飛べる」
そう、飛べるよ。いつだってここから。どこまででも。
心底嬉しそうなもっちゃんを、一生忘れない。
・Walk down a bridge
最後の最後はやっぱりこの曲だよね。
イントロの時に、もっちゃんが袖にいたタムラさんと
「おつかれさま」ってでっかく書いた紙持ってたスタッフに
口パクで「ありがとう」って言ってたのを見た。笑顔だった。
さっきの熱が空へ上っていくのを感じる。
夜なのに、冬なのに、室内なのに、ひたちなかの太陽を思い出した。
「前へ 前へ 前へ」
全員で叫んだ。皆やっぱり最後も泣いてた。
だけど音は確かに力強かった。前へ、前へ。
アウトロでやっぱりグローバーさんは叫ぶ。
どうしても、音を途切れさせたくないとでもいうように。
最後の瞬間、マイク無しでもっちゃんが
「ありがとう」
と叫んだ。精一杯の声が聞こえた。
手を繋いで、4人並んで。
手を繋いじゃったから涙を拭けなくてぐちゃぐちゃの笑顔。
暫く頭を上げなかった。
そして、4人がステージを去って。
4人のJackson vibeは終わりを迎えた。
心の音がね。鳴ってた。
魂の音が、聴こえた気がした。
そういうライブだったんだ。
どんな音かって聴かれたら、心の音って答えるしかない音。
消えない熱を帯びている音。
きっと何年たっても思い出せる。