マボロシのギタリストであるタケさんと
マボロシのバックバンドのクンゴさん、大ちゃん、よしさんの4人で結成した
レイドバックスの初ライブが12月14日に開催された。
『ファンクのルーツを探りつつ、新しい音楽をやっていく』バンドとのこと。
当日は友人知人、関係者が多く集まり開演前からとてもくつろいだ
そんな『レイドバック』な空気に包まれていた。
2部構成のライブは非常にアットホームに行われ、野次も飛ぶしMCもぐだぐだ。
タケさんのMCの時に「お前のMCはだめだなー。」と叫んだのは坂間大介様。
「鯖江ー!(タケさんの地元)」と叫んだのはハナレグミ様。酷すぎる(笑
とにかく、メンバーはマボロシのときとは比べ物にならないほどに
リラックスしていたような気がした。まさに『レイドバック』
だからといって演奏がぐだぐだだなんてことは全くない。
巧いのだ。圧倒的に。鳥肌が立つくらいに巧い。全員が全員巧い。
今思い出しても鼻血でそうになるくらい巧くて気持ちいい音が
BYGという小さなライブハウスに響き渡った。
ベースの大ちゃんは、私が知ってる指弾きベーシストの中で最も若いのだが
マボロシの時からいいベースラインを弾くなあと思っていた。
レイドバックスは大ちゃんの在籍バンドBasilよりも黒いファンクで
ベースラインもより黒かった。
この若さでその黒さ?と突っ込みたくなるくらい艶のあるベースで
(若さゆえの勢いや荒削り感も勿論あってそれも味で良い)
このベースラインを大ちゃんが作ってるならこの子はどんだけ将来有望なんだろうと
特に1部は全編通してベースを耳が追いかけまくってしまった。
キーボードのよしさんはオリジナル曲も手がけていた。
バイクユアーズの時も思ったんだけど、よしさんの作る曲は
音色が凄く綺麗でジャズテイストだ。
リズム隊が遊ぶ幅は結構広くて、その上によしさんのキーボードが鮮やかに乗るって言う
そんな黄金パターンで組み上げる曲を書いてると思う。
陽性の音楽だなあって、そんなイメージの曲が多くて聴いてて気持ちがいい。
ドラムのクンゴさん。
マボロシのライブでも分厚いなあ、巧いなあって思ってたんだけど。
圧倒されました。すげえってライブ中に3回は呟いてたはず。
マボロシは基がHIPHOPだからリズムはループが多いけど(ベースのフレーズもループが多い)
レイドバックスはそうじゃないからマボロシと比べて全然手数が多い、細かいドラミングで
しかもひとつひとつが粒だってちゃんと聴こえるのね。
滑らないし重ならないしぼやけないし。だからって自己主張が激しすぎてうざいわけでもない。
遊べる範囲を遊びつくした上で、曲を全く壊さないどころか土台として
大ちゃんとコンビネーションばっちり。
2005年はリズム隊発掘の年だったと言ってもいいようなドラミングを観ました。聴きました。
1月のマボロシのインストアライブ以降、どんなバンドでもまずリズム隊を
チェックするようになったのはクンゴさんと大ちゃんの影響です。ええ。
そしてギターのタケさん。
SBDの時からずっと彼のギターはどこか解放的で、空にまっすぐに抜けていくイメージだった。
野外が似合うなあと(それはSBDのイメージでもあるけど)
だから、レイドバックスの音楽を聴いて物凄く驚いた。
黒い。黒すぎる。真っ黒だ。
夜中のクラブとか、煙草の煙の充満するライブハウスが似合う音だ。
殆ど歪ませないクリアな音色のギターは一音一音ごまかしが聴かないからこそ巧さが際立つ。
マイルスのカヴァーも、よしさんのオリジナル曲も、
黒すぎるラップを疲労した(笑)『彼女はカトリーナ』も、どの曲も。
こんな間近で観ちゃったよって激しく興奮してしまうほどに凄い演奏でした。
リズム隊がしっかりしてる分遊べるってのもあったのかなーと今になって思ったりしてね。
『レイドバック』というのはゆったりとした、とかのんびりした、とかそういう意味なので
音楽用語としては正確なリズムを刻むと言うよりも少し遅らせて、とか
そういう風に用いる言葉なのだと解釈している。
しかし、それは『もたつく』のとは違うのだ。
レイドバックスは名前の通りゆるいゆるいライブをやったけれど
それは別に下手糞なわけでも甘いわけでもない。演奏に関して言えばガチだった。
『レイドバック』という単語を調べている時にみうらじゅんの言葉にぶちあたった。
「ロックでいうレイドバックは、仏教でいう悟りだ」
意味がわからん、と思う人は少なくないと思う。
では、超有名なドラマーのスティーブ・ガッドの言葉。
「レイドバックするのは少しも難しいことではない。僕は自分のやっていることに気がつき、
それをはっきり認識した時、どうすれば変えられるかわかった。
自分の内側を見つめ、自分に聞いてみる。結局は自覚の問題なんだ。
レコーディングしたものを聴き返してみた時、おかしいな、叩いている時の感じと違っている、
と思ったのが始まりだね。気持ち良く叩いていたなら、
そのとおりに聞こえてこないといけないからね。」
2人が言ってることは共通しているってのがわかる。
自分がどう演奏しているか、自分の音がどう響いてるか。
それを自覚、理解することがまず大切と言うこと。
そして、それを理解しないことには『レイドバック』つまり、
自分にとって気持ちよい、くつろいだ、ゆったりとしたリズムを生むことは出来ないと言うこと。
レイドバックスは、一人一人のレベルが高いからこそ
あのユルさでガチの演奏をこなすことができる。
自分の音も、仲間の音もちゃんと理解してるからこそこの4人が気持ちいいと思える音を
奏でることが出来る。
それって凄いことなんじゃないの?と思う次第であります。
レイドバックスの次回のライブは1月21日。その次は2月4日。
皆勤の方向でがんばります。