日々のニュースを耳にする度に、「なんてこった!」と、毎日のように腹が立ち、あきれ果てている。

 

環境省大臣と、水俣病被害者との懇談会の席上で、環境省の職員が了解を得ることなく、被害者の発言中にマイクを切断したって。

 

それも大臣の帰りの飛行機に間に合わせるために、一人当たりの発言時間を3分間と決めて、時間が過ぎたら勝手にマイクを切断。その懇談会で、大臣を気が付きもせず肉声で聞こえていたからと気にも留めなかったという。

 

私の憶測だが、発言中にマイクを切るということはあらかじめ用意していたに違いない。官僚はあらかじめ決められたこと以外のことを臨機応変に対応することは少ない。担当者間で、懇談会をどのように運営するかについて承知していなければ,

とっさの判断であのようなことが出来ようか。

 

懇談とは、「親しく打ち解けて話し合う」こと。

発言を3分間以内にまとめて時間内に終わらせる、ということは、「懇談」とは言えない。

 

コロナで自粛中でのボランティア団体でのZOOM会議のこと。出席者は、担当自治体の職員と、20代から80代までのボランティア。私をはじめZOOM会議にも不慣れの方が多く、緊張しながら発言している最中、予定時間を守るためか司会者が「要点を整理して2分以内に発言をしてほしい」「次の方がいますのでそろそろ終えてほしい」と繰り返す。

 

担当職員が不慣れだったり、予定時間内に所定の内容を終わらせたいという気持を理解できる。時間が超過することで、時間外労働が発生したりそのほかの業務が遂行できないこともあるだろう。予定時間内で終わらせる意図があることを、事前に参加者に伝え了解を得ておけばまだしも、その場で直接指摘されることは不愉快。数年経過した今も、思い出すと不愉快。

 

発言が少ないと「自由になんでも話して」「難しく考えないで」とか言うが、開催者側の意図に反する発言は好まれないだろうな、時間内に終わりたいんだろうな、と妙な詮索をしたくなる。

たかが、20数名の参加者ででの出来事だが、「共助」「住民主体の活動」と

いう割には、住民の一人である私自身も含めて、対話や話し合いを基礎に地域を作り上げていく力が足りない。

 

水俣病は、チッソトいう化学製造会社が、有機水銀を垂れ流したことよるもので、企業責任を長い間認めずに、被害が拡大し救済処置も不十分なまま今日を迎えている。

 

しかも、被害者なのに「国民」や地域住民から差別を受け、有機水銀中毒症状をひた隠しにして暮らしたり、結婚や就職ができない、熊本出身であることを口にしないで県外で暮らした人もいる。

 

環境省がこんな傲慢な態度で懇談会を終えようとした背景に、一部の人々の被害者救済に対する「妬み」「ひがみ」「不公平感」や、企業責任を認めないでいた歴史によるもの??

 

 

 

「マイク切断」問題について、「朝日」「毎日」「東京新聞(結構早くから取り上げていた)」等でも取り上げていた。日経新聞では、一面のコラム「春秋」で以下のような「エッセイ」でこの問題に触れていた。

 

(以下、5/9 日経新聞朝刊より転載)

 

『 父親が水俣病になり、母親も看病で体を壊したとき、勝子ちゃんは小五だった。朝からご飯を炊いて家族に食べさせ、片付けた後で登校する。担任は「欲教室で居眠りをする。そんな時はなるべく寝かせるようにした。叱るほうが恥ずかしいですからね」と見守った。

▼石牟礼道子さんが1961年にエッセイで紹介している一家族の姿だ。勝子ちゃんは

今でいうヤングケアラーだろう。家族にも過酷な重荷を背負わせている病気である。

「奇病で金がもらえてよかね」。そんな嫌がらせを受けることに、勝子ちゃんは納得がいかない。「悪いことしないのに、いじ悪されると、うちはこらえられん」

▼呆れる「いじ悪」がその病を巡って起きた。伊藤信太郎環境相と水俣病患者らの懇談で、発言が予定の3分を超えた被害者のマイクを役人が切ったという。大臣の帰りの交通機関に間に合わせるためだったとか。「聞く力」が旗印のはずの政府も、ずいぶんと慌ただしいことである。伊藤氏は昨日水俣を訪れ頭を下げた。

▼思えば水俣病は国が持ち出す「決着」が反発を呼び、打開が遠のく展開を繰り返してきた。終わったことにしたい。そんな姿勢が透けることに被害者の不信は深いのだ。人の痛みや怒りへの想像力を欠いては問題は前に進まない。勝子ちゃんが「うちはほかの人の分まで腹が立つもん」と語ってから、もう60年を超える。 』

 

 コラムに取り上げないより、取り上げるほうが良いけど、「企業責任」「国の責任」には、一切触れないでいる。「意地悪」が、60年を超えて続いているというが、意地悪で済ませられる問題ではない。水俣病問題は、国と企業による犯罪だ。その基本的な認識が欠けるからこそ、こういった「上から目線」=「大臣が被害者の話しを聞いてあげる」的な懇談会が開かれたのだとしか思えない。