数年前、CS放送で「深夜食堂」の再放送をしていた。

オープニングの「思ひ出」が妙に懐かしく、たぶん深夜の都心の幹線道路をタクシーが走っている映像。

人混みでにぎやかだった都会も深夜近くになると、道路を走るタクシーやトラックだけになる。「思ひ出」を聞きたいばっかりに、録画してオープニングだけ繰り返し見たこともある。

 

深夜食堂のテレビドラマは、一回ごとにマスターに作ってもらうお料理とお客さんのエピソードが変わる。「人生行き当たりばったり」は、ドラマの中の挿入歌。

記憶間違いかもしれないが、売れない演歌歌手がこの歌に出会ってヒットするが、がんに侵されて短い人生を終わるといったストーリーだったような。

(間違いかもしれないけど)

 

「人生行き当たりばったり」は、まるで自分のことが歌になったような。

戦後の高度経済成長の時代に、女は結婚して子供を産み家を建てるといったことが普通といわれていた。そういう常識に反抗していた私。25歳を過ぎると、「売れ残り」とか言われて、周囲から見合いを勧められた李、何かと「結婚して安定した人生」を選択しないのは女としてまっとうな生き方ではないと、散々な目にあってきた。

 

「年取ったら一人でどうするの?」(老後を見てもらう子供が必要)

「一人だと寂しいぞ! どうしようもない相手でも一人よりまし!」(女は一人では生き られない)

 

あの時代から50年たった21世紀を迎えてみれば、家庭の事情が信じられないような複雑な様相を見せている。毒親、DV、ひきこもり、家庭内別居、親兄弟間での殺人、老々介護、介護離職、少子高齢化、独居老人の急増などなど。退職後の悠々自適な生活も夢幻であったし。

 

つい数日前、10歳ほど年上の人方とこの歌のことが話題になり、私のことがうたわれているみたい、と話したところ、「その時その時の自分を大事にしてきたんじゃないの」という言葉が返ってきた。

 

世間の常識といわれていることも疑ってかかるしかない。

 

心身の状態が不如意になっても、その時は運命に任せるしかない、準備だけ発しておいたとしても何が起こるか神のみぞ知る、ということだと腹をくくっている。