蕎麦屋さんで、手のアルコール消毒後に、手爪に保湿剤を塗布していると、女将さんが「それって、何?」と。「爪はたんぱく質で出来ているので、お肌と同じように保湿が大切で、アルコール消毒を何回もしていると爪があれてしまうから」と応える。
女将さん「爪のこともご存じなの?」
私 「学生時代も、働くようになっても爪の解剖生理なんて習わなかったんで
す。定年になってから具体的にフットケアを習い始めて、修了証をやっとい
ただけたんです。」
女将さん「足の爪で困っている方って大勢いるのよ。私も最近は足の爪切りが難し
くなって、フットケアの専門店まで行こうと思っているんだけれど、往復3
時間もかかるのでどうしようかと悩んでいるの」
私 「まだ習いたてなので、爪切りのモデルさんを探していたところなんです
けど、私にさせていただけますか」
女将さん 「ここに来ていただけるのなら嬉しいわ。往復の時間を考えるだけで迷っ
ていたのだけど。そうなの、本当にいいの」
どんな状態なのか、見せていただくと皮膚も爪も丁寧にケアされている。軽度の巻爪と一本だけ肥厚と混濁、後爪隔方向に爪が伸び始めていて甘皮の上に爪がのっている。無理のない範囲でケアをさせていただく旨を伝え、急遽お店の休憩時間に伺う約束をする。
そして、その翌日の午後ドキドキしつつ、やり切るしかないと覚悟もして。
自分が座る椅子、ビニールシート、消毒剤、保湿剤、軟化剤、各種爪切り道具、タオル、コットン、使い捨てシート、時計などなど自転車の後ろかご用バックに詰めて、いざ訪問。
一見きれいな足だけれど、やはり爪と皮膚の間に硬く固まった垢がビッチりついていて、角質軟化剤を繰り返し塗布してゾンデで取り除いていく。爪と皮膚の間にスペースがはっきりしてきたところで、爪を少し切り、また垢を取り除き。何とか10本の足の爪を切りおえ、硬く肥厚した部分にグラインダーをかけて少し薄くする。膝下から足部までのマッサージ、爪用オイルを塗布して終了。
フットケアの先生には「1時間が限度よ」と何回も言われているのに、75分もかかってしまい、befor & after の写真を女将さんと一緒に見ると、「及第点ギリギリ」か「落第寸前」の出来栄え。
「気持ちいいわ」「足が軽くなったわ」とおっしゃっていただけたが、「初めてだから仕方がないわよ」と慰めてくださる。
自分一人の責任で、爪切りをする厳しさを教えていただいた。
我が身の力のなさに愕然としつつ、俄然学習意欲が燃え上がり、
「爪 基礎から臨床まで」東 先生 の小難しそうで非常に実践的な記述を読み進めることができた。
ずっとフットケアの学習を続けてきたけれど、先生に教えていただきながら行うのと違って、たった一人で行うことの刺激の強さ(ダメダメ自分を何とかしたい)。
組織の中でチームに支えながらのケアと、自分の後ろに誰もいない中で行うことの違いを味わった午後であった。