新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、スマートフォンやパソコンを使った「オンライン診療」が広がりつつあります。 通院しなくて済むという利便性から積極的に活用する人もいれば、これまで通りの対面診療が安心だと考える人も。 あなたは受けたいですか。 

 東京都渋谷区の会社員(26)はぜんそくと慢性胃炎の治療のため、2か月に1回程度、オンライン診療を利用します。 在宅勤務の昼休み、スマホの画面越しに、都内の診療所にいるかかりつけ医とつながります。 処方された薬は、近くの薬局で受け取ります。 「通院には片道30分ほどかかる。 仕事が忙しい時期は特に、時間を有効に使えるありがたみを感じる」と満足しています。

 厚生労働省が2023年6月に公表した患者調査で利用者に理由(複数回答)を尋ねたところ「感染症の予防」(35%)が最多で、「仕事や家庭の事情で通院する時間がない」(32%)「対面診療より気軽に受診できる」(25%)が続きました。 

 医師らでつくる「オンライン診療の健全な推進を図る有志の会」の山下代表幹事は「発熱外来が 逼迫ひっぱく したコロナ禍では、画面越しに『やっと医師と向き合えた』と涙を流す患者もいた。感染症のパンデミック(世界的大流行)や大規模災害の時に必要な医療を受けられる。 

平常時も、どこでも受診できるため、忙しい患者でも治療を続けられる」と利点を強調します。

 地方の患者には、都市部に集中する専門医とつながる手段になります。 沖縄県宮古島市の女性(46)の長女(12)は1年前から、1500キロ離れた大阪市立総合医療センターで働く、てんかん専門医の診察を受けています。 島内に専門医はいません。 初診では、発作の様子を撮影した動画などを確認してもらいました。 専門医が勧めた薬に変更すると、1日4、5回あった発作がなくなり、落ち着いて暮らせるようになりました。 女性は「車いすの娘を遠方の病院に連れて行くのは大変でお金もかかる。 オンラインのおかげでよい医療を受けられる」と喜びます。 

 慢性の病気で症状が安定した患者はオンライン診療に向いているとされます。 でも男性は「対面診療のような安心感は得られない」と考え、利用するつもりはありません。 「毎回の診察では、血圧以外の不調も相談できる。 腰が痛ければ『どれどれ』と診てくれて、検査もスムーズ。 画面越しではそうはいかず誤診も心配」といいます。

 予約や診察には専用アプリのダウンロードが必要な場合も少なくありません。 デジタル機器が苦手な人もいます。 同区医師会長の渡辺大場診療所副院長は「高齢の患者から『オンラインで診察を受けたい』と聞いたことがない。 ハードルが高いのだろう」と推測します。 

厚生労働省の調査では、コロナ禍の2021年1~3月にオンライン診療を利用した人の7割が40歳以下でした。