『六人目の少女』 | 本だけ読んで暮らせたら

『六人目の少女』

IL SUGGERITORE (2009)
『六人目の少女』  ドナート・カッリージ/著、 清水由貴子/訳、 ハヤカワ・ポケット・ミステリ(2013)


犯罪学者ゴラン・ガヴィラが呼び出された森で見つかったのは左腕・・・が5本・・・。

世間を震撼させている5人の少女の連続誘拐事件。やがて左腕は彼女たちのものと判明する。


だが、その森では6本目の腕が発見されていた・・・。当局には6人目の誘拐があったという情報はないにも拘わらず・・・。

しかも6本目の腕は生体から切断されたとの分析結果が得られた・・・。

いったい6人目の少女は? 彼女は生きている??


失踪人捜索のエキスパートであるミーラ・ヴァスケスに、犯罪学者ゴラン・ガヴィラと特別捜査官たちから構成される捜査チームに加わるよう命令が下る。

何としてでも6人目の少女を救いたい。その一心で捜査チームに加わったミーラ。


ミーラとガヴィラと特別捜査官達の懸命の捜査を嘲笑うかのように、犯人は少女たちの遺体を敢えて一人づつ発見させて行く。少女たちの遺体発見現場で見つかる遺留品や状況などから、犯罪学者ガヴィラは犯人のプロファイルや精神状態を推測し、やがて、捜査チームは容疑者を発見した・・・・・かのように見えた。

しかし、別の少女の遺体が発見されるたびに、別の容疑者がまた現れてくる。。。

複数のシリアル・キラーによる犯行!? しかも、その複数の犯人を陰で操るものがいる・・・・・!?



イントロダクションの強烈なインパクト。 プロット・アイデアの新鮮さ。 意外な展開の連続!それが幾つもある。 

さらに、家庭に問題を抱ている捜査官、過去の事件において失敗を犯している犯罪学者ゴラン・ガヴィラ、そして、あるトラウマを抱えている主人公ミーラ・ヴァスケス、など、捜査側の人間の置かれた状況も直接的に事件に関わることになり、物語の核心部に影響を与える。

見事な人物設定。キャスト配置。


『羊たちの沈黙』が発表されて以来いくつも描かれたサイコ・サスペンス。かつて乱発され、一時期は飽和状態にあったサイコ・サスペンス。それらとは一線を画す本作。

・・・と思えた。

確かに既往作品とはレベルが違う。『羊たちの沈黙』以来の凄いサイコ・サスペンスだと思う。クライマックスまでは・・・。

クライマックスで、ある主要人物に訪れる転向が安直過ぎるのではないかと私には思えてしまった。意外な真相の開示による大どんでん返しの場面を描くことに注力し過ぎて、その人物が転向する根拠の説明としては説得力に欠けている(強引すぎる)ように思えた。そこがチョイと残念。


しかし、期待するところもある。

不気味なエンディングに垣間見えたフランキーの真のフィナーレとミーラの行く末が今後描かれることに。。。

続編刊行の期待を込めて、お薦めです。