『喪失』
- gone (2010)
- 『喪失』 モー・ヘイダー/著、 北野寿美枝/訳、 ハヤカワ・ポケット・ミステリ(2012)
2012年のアメリカ探偵作家クラブ賞を東野圭吾・著『容疑者Xの献身』と争い、その『容疑者・・・』を破り、最優秀長編賞を受賞した作品だそうだ。
それにしても最近のポケミスはどれもこれも長い。本作も2段組み480ページもある。分厚い作品は読み始めるのに覚悟がいる・・・。
日・月・火・水曜日の四日間で半分ほど読んでいたが、昨日の出張の往復車中で残り半分を一気に読み終えた。長距離列車の座席での読書は捗る。
買い物帰りの主婦を狙った車の強奪事件。しかし、後部座席には幼い少女が乗っていた・・・。
車の窃盗が目的なら、少女の解放は時間の問題と目されていた。だが、少女の行方は依然不明のまま・・・。
重大犯罪捜査隊の指揮官ジャック・キャフェリー警部は、誘拐事件として扱うことに捜査方針を切り替える。
そして、今回と同じような事件が過去にもあったことが判明し、事件の様相は一変する。
連続少女誘拐事件!?
狡猾な犯人は警察と被害者家族を挑発し、遂には、刑事が警護するセイフティ・ハウスからさえ少女の拉致に成功する。さらわれた少女たちはどこに?? 焦るキャフェリー警部・・・。
キャフェリー警部に過去二件の少女誘拐未遂事件があったことを指摘した潜水捜索隊隊長のフリー・マーリー巡査部長は、その経験と勘から、ある運河を捜索し、その近くにある19世紀に掘られたトンネルに着目する。キャフェリー警部に進言して行った捜索の成果はゼロだった・・・。だが彼女の勘は、何かを見落とししていると告げていた・・・。
キャフェリー警部視点で描かれた章とマーリー巡査部長視点で描かれた章を中心とし、ときおり犯人もしくは被害者家族視点で描かれた章を挟みなが物語は進行する。その進行具合は実にサスペンスフルだ。
キャフェリー警部とマーリー巡査部長、主役二人のキャラ描写も申し分ない。
だが、幾つか引っ掛かる点があった。
一つは犯人の動機。過去のトラウマが原因であるかのように仄めかされているが、そうなの?って思えちゃう。ここまでの事件を起こすには動機が軽い。。。犯人の心理描写の書き込みが足りないように思えた。
二つ目はマーリー巡査部長が抱える秘密。前作に関連するのだろうが、彼女のキャラ設定からして、何故そんなことをした???と思えるようなエピソードが描かれている。なんだか不自然・・・。
まァ、幾つかの欠点は挙げてみたものの、総じて楽しめた作品であることは確か。