『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』
昨年末のミステリー・ランキング本に挙げられていたのを見て覚えていたヤツ。
作者デュレンマットは、スイスの劇作家・小説家。ついこの前読んだ『ミステリ文学』 でも挙げられていた作家。その4編の作品を集めたもの。
光文社古典新訳文庫ならではのナイス・チョイス作品!
■トンネル
24歳の肥った男が乗ったいつもの列車。列車はトンネルに入った・・・。が、列車はいつになってもトンネルから抜け出さない。列車はトンネル内の下り坂を徐々に速度を上げて行く・・・。
短編ミステリにありがちな結末。つまり物語は決着しない・・・。 リドル。
■失脚
一党独裁国家の政治局幹部が集まった密室での権力闘争劇をデフォルメして描いた物語。
密かにお互いの動向を監視し合い、影では足の引っ張り合いを行っている政治局の幹部たち。
僅かな政治的失言や弱気な態度が、即座に自身の失脚に繋がる会議。そこではグロテスクな駆け引きが行われている・・・。
・・・シニカルな喜劇。
■故障 -まだ可能な物語-
これが一番面白かった。
自動車の突然の故障によって地方の村の引退した裁判官の家に宿泊することになった主人公の男。
その家の近所に住む引退した元検事と、やはり引退した元弁護士らも一緒になって、一夜の晩餐会とゲームとしての裁判が開かれる。
主人公は上司殺しの犯人に仕立て上げられ・・・・・、その結末は喜劇と化す。
読み終った直後は、化かされたようで、ポワワーンとなる。その後、じんわりと、「もしかしたら、こりゃ、なんだかスゲー作品かも!?」と思う・・・。
■巫女の死
ギリシア神話「オイディプス王」の中身が判っていない我が身にはナカナカ理解しにくい内容だった。
浅学・・・orz・・・。
4編どれもが、純文学とも、純エンターテイメントとも云えない内容。
今まで経験したことのない奇妙な読後感を持つ作品。
どこがどう奇妙なのかを具体的に言い表せない語彙力・表現力の無さが情けない・・・。
・・・が、読んでみて、と云いたくなる作品。
ん~、やはり、光文社古典新訳文庫は凄い。
<これまでに読んだ光文社古典新訳文庫>
『梁塵秘抄』 『アウルクリーク橋の出来事/豹の眼』 『ガラスの鍵』 『天来の美酒/消えちゃった』
『種の起源(上)』 『種の起源(下)』 『カフェ古典新約文庫 Vol.1』 『闇の奥』
『愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える』 『幼年期の終わり』 『木曜日だった男』 『飛ぶ教室』