『紳士の黙約』 | 本だけ読んで暮らせたら

『紳士の黙約』

The Gentlemen's Hour (2009)
紳『紳士の黙約』  ドン・ウィンズロウ/著、 中山宥/訳、 角川文庫(2012)


サンディエゴのサーファー探偵ブーン・ダニエルズが活躍するシリーズの第2弾。


『夜明けのパトロール』 の続編。

前作では、主人公のブーンとその仲間たち=“ドーン・パトロール”と呼ばれる地元で一目置かれたサーファー達の人物紹介と、ハードボイルド小説の主人公ブーンの葛藤と活躍がストレートに描かれた。


本作は前作に比べるとミステリー色(推理小説っぽさ)が強まっている。



地元サンディエゴで知らぬ者はいない伝説のサーファー=ケリー・クーヒオ(K2)が、地元のサーフ・ギャングを名乗る少年に殺された。

K2を敬愛してやまない地元の人々からは、逮捕された少年を厳罰に処すべき、との声が高まっている。

もちろんブーン達、ドーン・パトロールの面々も同様の考えだった・・・。

だが、少年の弁護士の依頼で、事件の周辺を調べ始めたブーンは、何か釈然としないものを感じ始める。挙動の定まらない少年の言動、少年の生育されてきた環境、少年の父親、そして白人至上主義組織との接点・・・。

ドーン・パトロールの仲間たちからは、弁護側の手先となったと思われているブーンは次第に孤立し始める。

さらに、浮気調査を依頼されていたブーンは、その調査対象者が殺された事件にも巻き込まれることになる・・・。


2つの事件に重なる謎。それらが交錯しだしてからは、推理小説としての主人公ブーンの新たな魅力が描かれる。ハードボイルド小説の主人公とは異なる新たな一面だ。

だがクライマックスでは、本来のブーンらしさ=ハードボイルド小説の主人公らしさ=自らの掟に従うストイックな男、が戻る。

ハードボイルド小説の主人公ブーンの活躍はもちろんのこと、ブーンの仲間たちも加わった大団円は爽快だ。

お薦めです。