『首斬り人の娘』 | 本だけ読んで暮らせたら

『首斬り人の娘』

DIE HENKERSTOCHTER (2008)
『首斬り人の娘』  オリヴァー・ペチュ/著、 猪股和夫/訳、 ハヤカワ・ポケット・ミステリ(2012)

11月4日記事で紹介した作品に続き、これもドイツ産のミステリ。 歴史ミステリ。


17世紀ドイツ。凄惨を極めた宗教戦争が終わってからおよそ10年後。中世から抜け出そうとしている時代。

バイエルン地方の小さな街ショーンガウで起こった子供3人の連続怪死事件。

子供達を魔術で殺したとして投獄された産婆。

その産婆の自白を引き出すため、街の有力者たちの命を受けて彼女を拷問しなければならないショーンガウの処刑吏=首斬り人のクィズル。

だが、クィズルとその娘マクダレーナ、そして街の若き医師ジーモンは、産婆の無実を確信していた・・・。

子供達を取り上げてくれた産婆に恩を感じているクィズル。クィズルの娘マグダレーナに恋するジーモン。二人は事件の真相を探り始める・・・。



主人公である首斬り人クィズルのキャラクターが秀逸。

人々から忌み嫌われる処刑吏という世襲の低身分でありながら、当時の呪術的医術とは一線を画した科学的医学に長けた型破りの大男。

そんな主人公が、魔女、俗信・迷信、伝説、が蔓延る世の中で起きた連続殺人事件に対して、合理的・科学的解釈に基づく真相究明を果たすことができるのか? 真犯人を暴くことはできるのか?

・・・まァ、できるのだが、その過程が実にスリリング、かつユーモラス、時にシリアスに描かれている。ところどころに魅せるアクションシーンも程良いスパイスとして効いている。

もう単純に面白い。単純な面白さは大事。

お薦めです。


4部作とのこと。続編の翻訳出版も期待。