『100年の難問はなぜ解けたのか』 | 本だけ読んで暮らせたら

『100年の難問はなぜ解けたのか』


『100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影』  春日真人/著、 新潮文庫(2011)


1904年に提唱されながら、100年もの間、幾多の数学者が挑戦しながらも解けなかった難問、ポアンカレ予想。

そのポアンカレ予想の解決が宣言されたのは2006年。その年のフィールズ賞は当然、ポアンカレ予想を解いた数学者に与えられるとアナウンスされた。

フィールズ賞の選出は4年に一回。ノーベル賞以上の権威とも云われる賞である。

だが、受賞は断られた・・・。


解いたのは、ロシアの数学者グレゴリ・ペレリマン。



本書、ポアンカレ予想がなぜ解けたのかが判る本ではない。

東大院を修了している著者自身でさえ判らないと云ってるのだから、普通の読者が判るはずもない。

そもそも、ペレリマン本人以外の他の数学者でさえ直ぐには判らないというのだから、並の人間が判るはずもない。

プロの数学者がレビューするのに2年も3年も掛かるような論文が判る者など、世界中に数えるほどだろう。


では、本書の内容は?、というと、

ポアンカレ予想がどういうものかを超大まかに解説したもの、そして、ポアンカレ予想を解いたロシアの数学者ペレリマンの特異性を窺い知るための本なのだろう。


そのような内容の本が面白いか?面白くないか?

これが結構、面白い。

なぜ面白いのか?

著者は、ペレリマンへのインタビューを最終目標としているのだが、その過程で世界中の数学者へのインタビューを実行している。その数学者たち、特殊なイマジネーションの世界を理解できる極々限られた人々が物事や他人を観る際、世界を語る際に発するコメントが面白いんだ。


結局、ペレリマンへのインタビューは出来ずに終わるのだけど・・・。