『実朝の首』
出たばっかりのハムロの最新文庫。 一気読み。
大雪の降り積もった鎌倉、鶴岡八幡宮の大銀杏の近くで鎌倉幕府3代将軍=源実朝(さねとも)が暗殺されるところから物語は始まる・・・。 実朝を暗殺した公曉(くぎょう)は早々に討たれたが、公曉が持っていたはずの実朝の首が何故か消えた!!・・・・・
これまでに読んだハムロ本とはチョット趣向が違う。
一応、史実とされているコトをベースとしながらも、史実だけでは判らないコトに関してはハムロ流の解釈を加えて、実朝暗殺の謎・暗殺の裏に隠されていた物語が仕立てられている。
結構な数の登場人物があり、特にコレといった主人公は居ない。 敢えて挙げるとすれば、亡き実朝に忠義を尽くす七人の男達か?? 鎌倉版「七人のサムライ」 それとも尼将軍=北条政子か?
京都の後鳥羽上皇 vs 尼将軍を頂点とした鎌倉の北条一族 vs 実朝の忠臣たち、といった三つ巴の抗争劇を中心として物語は展開されるのだが、クライマックスからラストにかけては、
■ この抗争を操っていたのが実は・・・・・・
とか、
■ 鎌倉幕府のその後の体制が確立していくのに、実朝暗殺事件が果たした意味とは・・・・・
などが明かされてゆく。
鎌倉幕府ってのは、初代の頼朝以外、どうして征夷大将軍はお飾りで、執権による幕府支配だったのかが良く判らなかったのだが、この本を読んで (ホントかどうかはともかく) 何となく「ソウだったのか!」と、納得できてしまった?!。 一つの歴史解釈として面白い。
・・・と、まァ、今回、私は、この物語を歴史秘話として読んだ部分が大きかったのだが、もちろん、ハムロのことだから、魅力アル登場人物たちの描写にも抜かりはない!
“鎌倉版七人のサムライ”など、漢たちの矜持の描き方はもちろんのこと、尼将軍や後の竹御所=鞠子など女性達が抱える苦悩の描かれ方が実にイイ!。
お薦めです。
これまでに読んだ葉室麟の作品 : 『乾山晩愁』 『秋月記』 『いのちなりけり』 『銀漢の賦』