『チャリング・クロス街84番地』 | 本だけ読んで暮らせたら

『チャリング・クロス街84番地』

84, Charing Cross Road (1970)
『チャリング・クロス街84番地 ―書物を愛する人のための本』
      ヘレーン・ハンフ/編著、 江藤淳/訳、 中公文庫(1984)


「チャリング・クロス街84番地」 いいタイトルだ。 この本、タイトルに惹かれて買ったようなもんだ。


チャリング・クロス街84番地には古書専門店マークス社がある。

チャリング・クロス街84番地はロンドンにある。


本好きのアメリカ人女性と古書専門店マークス社のイギリス人男性店員との間に交わされた1949年から1969年までの20年間に及ぶ書簡集。


随筆集や詩集などの古書の購入を依頼するアメリカ人女性は本書の著者ヘレーン・ハンフ。ニューヨーク在住。

彼女は、欲しい本のタイトルだけでなく、なぜその本が欲しいのかとか、本を手にした時の感動や本を読んでの感想など、ユーモア溢れる中身の手紙をマークス社に送る。おおよその購入資金を添えて。


へレーンの依頼に応えるのはマークス社のフランク・ドエル。

彼もまた、ヘレーンから依頼された品を送付する際に手紙を添える。手紙の文面は、彼の誠実な人柄を偲ばせる。かといって堅物ではなさそうだ。ヘレーンの、時にブラックなジョークにも見事に対応した返信をする。


物資が貧窮する戦後のイギリスに暮らすマークス社の社員達に対して、時には卵やら肉やら生活品も送るヘレーン。

そんな彼女の親切に対して、フランクの奥方やマークス社の社員達からもヘレーンに手紙が届くようになる。


往信と復信の手紙だけで構成された本書だが、不思議とそこには物語が見えてくる。

お薦めです。