『暗殺のジャムセッション』 | 本だけ読んで暮らせたら

『暗殺のジャムセッション』

CAST A YELLOW SHADOW (1967)
『暗殺のジャムセッション』  ロス・トーマス/著、 真崎義博/訳、 ハヤカワ・ポケット・ミステリ1827(2009)


40年以上も経って翻訳された『冷戦交換ゲーム』の続編。

『冷戦交換ゲーム』では、東西冷戦下でのエスピオナージュが描かれた。

だが、今作の状況は前作とはチト違う。アメリカvsソ連、あるいは西ドイツvs東ドイツの構図はまったく関係ない。

ワシントンを訪れているアフリカ南部の小国の首相の暗殺を巡る計画に、主人公マッコークル(マック)と彼の妻フレドルが巻き込まれる。


発端はマックの相棒パディロがアメリカに戻ってきたことから始まる。凄腕の工作員であったパディロに目を付けたアフリカ某国の組織が、首相暗殺の実行を強要するためにマックの妻フレドルを誘拐した。

マックとパディロは、ワシントンDCのギャング一味や、パディロに借りのあるイギリス・ポーランド・ハンガリーの3人の工作員たちを巻き込んで、フレドルの救出と首相の暗殺阻止という背反する目的を同時遂行するために奮闘する・・・。


登場人物たちの書き込みと複雑なプロットに道筋をつけるため、前半部は少々スローなテンポで話が進む。

このスローな物語の展開中、マックとパディロは相変わらず飲んだくれている。

クライマックスは一転してスピーディだ。

ギャラを支払って味方に付けたはずの各国工作員やギャング一味の裏切りに継ぐ裏切り。その裏切りに対して策略を張るパディロとマック。更に思わぬ裏切り。それに対応するマックとパディロ。。。


やっぱりロス・トーマスの描く作品はいい。

登場人物たちの言動や心情をことさら大袈裟に表現することもなく、それでも、人物間の会話と表情や振る舞いを表現することで、男同士の信頼関係や男女間の微妙な情愛の発露、様々なシーンの雰囲気を感じ取ることができる。

読んでる最中、酒が飲みたくなるのもトーマス作品の特徴。