『ユダヤ警官同盟』
- THE YIDDISH POLICEMEN'S UNION (2007)
- 『ユダヤ警官同盟』 上・下 マイケル シェイボン/著、 黒原敏行/訳、 新潮文庫(2009)
久しぶりに本を読んだ。
2007年。ユダヤ人達が暮らすアラスカのシトカ特別区。
この地は2ヶ月後にアメリカに返還される予定となっている。
シトカ特別区の殺人課刑事ランツマン。酒浸り。別れた女房が上司。
彼が暮らす安ホテルの一室でヤク中毒の若い男が後頭部を撃たれて殺された。死体の傍らにはコマの並べられたチェス盤。 チェスと浅からぬ縁を持つランツマンは事件に強い興味を覚える・・・。
ユダヤ教一派の指導者であり、マフィア的な影響力をも併せ持ち、警察上層部にも力を及ぼすことのできる男の脅しにも屈せず、ランツマンは相棒ベルコと共に暴走気味の捜査に乗り出す・・・。
と、まァ、この小説の前半部を要約すると上記のようになるのだが・・・、この前半部を読み、理解するのが実に辛かった!200ページまで読んだところで、私の頭の中はグッチャグチャだった!
ユダヤ教の教派がいくつも出てきて、その相違がまったく判らんし、そもそもアラスカに、シトカ特別区なんていうユダヤ人街なんてあったか?? そのシトカ特別区がアメリカに返還される??? そんな事実をどうして俺は今まで知らなかったんだ!? ・・・などと、物語設定のところで引っ掛かっちゃって、どうにもストーリーに集中できなかったのだ。
208ページを読んでいると、“1946年にベルリンに原爆投下”なんてことが出てきて、ますますおかしい!
違和感満載のこの小説はなんだか怪しい! と思い、途中で巻末の解説を読んだら、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を受賞した、と書かれており、この小説がやっとSFの一種なんだと気付いた次第。
現実とは異なる歴史を経てきたパラレル・ワールドの2007年を舞台としたハードボイルドなんだと判ってからは、ストーリーにも集中できるようになった。
それにしても、200ページ以上も気付かなかった俺って・・・ (^_^;)
で・・・・、設定を理解し、物語に集中できるようになった後も、さしてページをめくる速度は上がらなかった。
やはり、ユダヤ教の社会・考え方というものに馴染みのない者にとって、この作品世界の出来事に今一つ付いていけないのである。ユダヤ人達が希求する聖地エルサレムへの帰還だとか、救世主を待望する感情だとか、私にはほんの少しの現実感さえも湧かないもんだから、この物語に登場する人物達の感情を理解できるだけの想像力も働かないんだな。
唯一なんとなく理解できて共感できたのは、主人公ランツマンと、彼の別れた元妻で現在は上司となったビーナとの微妙な感情の行き来くらいだったな。
現在、多くの書店の平台に本書が大量に積まれていて、新潮社の力の入れようが見える。
今現在書店に出回っている版の帯には、大森氏の煽った推薦文句(年末のランキングの1位候補だとか?)が掲げられている。
私見ではあるが、一般的な日本人の感性に合った作品だとは思えないし、ミステリの出来としても、年末のランキング上位に食い込むほどとは思えんのだが・・・?
私の予想が外れて、大森氏の予想通り、本書が年末のランキング上位に入ることがあるとすれば・・・、それは、そもそも海外ミステリを読む日本人は一般的ではなく、ヒネたものの見方をする輩が多いということか!?