『キングの死』
- The King of Lies (2006)
- 『キングの死』 ジョン ハート/著、 ハヤカワミステリ文庫(2006)
この作家の2作目 『川は静かに流れ』
を読んで、この作家の力量を知り、デヴュー作も読みたいと思っていたのだが、何軒かの本屋で探してもなかなか見つからなかった。それが意外な所で見つけた。なんと、会社の私の机の上に積んであった。
PCディスプレイの裏側に、読み終わった文庫本がカバーしたままいくつか積んであるのだが、その中の1冊として埋もれていた。2007年から2008年度の仕事が終わって、いくつか書類整理、机上整理をしている過程で見つかった。自分で買って、置いたまま忘れていたらしい。読み終わった本ばかりが積んであるのだとばかり思っていたが、未読本もあったのだ。マヌケな話だが、まァー、ラッキーと思っとこう!
イヤー!読ませます。
600ページもあるのだが、日曜日に一気に読んでしまった。
街一番の敏腕弁護士が失踪してから18ヵ月、その弁護士の射殺死体が見つかる。街の実力者だが、強引で強欲でもあった当の弁護士エズラ・ピケンズは誰からも嫌われていた。
父親の死の報告に際しても、ワーク(この物語の主人公)は別段悲しみなど感じることはなかったが、妹のことが心配であった。父親が失踪した晩、ピケンズ家に起こった数々の出来事によって、ワークは妹が父親を殺したのではないかと疑っていた・・・。
ワークもまた弁護士であり、父親の傲慢な支配の下、充足した自分を確立できないまま成長してきた。
そんなワークが、妹を守りたい一心で、エズラ殺害の事件捜査に自ら絡み、また巻き込まれもする。
ワーク自身でさえも嫌い、恐れていた父親エズラ。
ブルジョワ志向の鼻持ちならない美貌の妻バーバラ。
男尊女卑の父親エズラに抵抗して家を飛び出した妹のジーン。
エズラ失踪の晩に、自宅の階段から落ちて死亡したワークとジーンの母親。
ワークの初恋の相手であり、今も最愛の女性であるヴァネッサ。
ワークの、これら家族に対する愛憎が、事件捜査やエズラ殺害の謎と複雑に絡み合いながら物語は進行する・・・・・。
主人公ワークの一人称語りであるだけに、一度ワークの心情に入り込めてしまえれば、そこから先、読者は焦燥感と喪失感に苛まれながらも、真相解明へと急ぎたくなる。
そして、物語の終着にはカタルシスが待ち受けている。
これで2作品を読んだわけだが、この作家の物語構築力は並外れている。
だが、本作の方が、『川は静かに流れ』よりも、格段にラストがいい! お薦めです。