『ちくま日本文学 内田百閒』
短編小説やら随筆やらが全部で36編収録されている。
例えば、『 件 (くだん) 』という話は・・・、
顔だけ人で身体は牛の「私」。そんな「私」が、何千、何万もの人々に囲まれる。
人々は、「私」がなにか大そうな予言をすると期待している・・・。だが、「私」には予言するようなことなど何もない。。。 だが、次第に人々の囲みが狭まり、「私」を圧迫するような状況に至って・・・・。
ネッ! ↑コレ、何が何だか判らんでしょ!
判らんけど、なぜ「私」の身体は牛なのか?とか、「私」はどんな予言をするのか?とか、気になっちゃうでしょ。
怪奇譚か? 夢の世界か? 妄想か? 百閒さんの描く物語世界には説明などまったくない。
読み出すと、いきなり摩訶不思議な世界に突き落とされ、その状態を否応無く受け入れさせられるモノだったり・・・、あるいは、いたって普通の日常の物語だったのが、だんだんと実は日常などでは無さそうだということが分かりだしてきたり・・・。
とにかくヘンテコリンな感じの短編がいくつも載っていて、そのどれもが一度読み出したら読者の首根っこをつかんで物語世界に引きずり込んでしまう。
で、引きずりこんどいて、何の前触れも無く、いきなり手を離す。そう、物語は唐突に終わってしまう。
どうなるんだ、どうするんだ、と思ったところで、ブラックアウト。。。 エッ! 終わりなの!? っていうラストばかり。
この本の前半部はそんな話ばかりが何篇も続く。オイ!またかよっ! と思いながらも読んじゃう。
意味不明、理解不能だけど、物語世界の雰囲気や匂いが、物語中の人物が何故そんな言動を採るのかが、不思議とワカるような気がする。。。解るのではなく、判るのでもなく、ワカる。ん~、旨く言えない・・・。
後半部は、随筆。エッセイというよりも随筆。明確な違いは無いかもしれないが、私の感覚としては随筆。良く判らんが随筆。 とにかく随筆。 いや、随想・・・?
最近の私の鞄の中には常にこの本が入ってる。 何気ない待ち時間とかに、チョコちょこっと、一編づつ読むのに都合がイイ。
お薦めです。