『アディオス、ヘミングウェイ』
- ADIOS HEMINGWAY (2000)
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- 『アディオス、ヘミングウェイ』 レオナルド・パドゥーラ/著、 宮崎真紀/訳、 ランダムハウス講談社文庫(2007)
キューバ。かつてヘミングウェイが暮らしていた屋敷。いまはヘミングウェイを称える博物館となったその屋敷が立つ敷地内で死体が発見された。嵐の後、倒木の根元から白骨死体が偶然見つかったのである。死体はおよそ40年前のものと判明。
まだヘミングウェイが暮らしていた頃、この屋敷で射殺され、埋められたのは誰か? ヘミングウェイは殺人事件に関与しているのか?
かつて刑事だったマリオ・コンデ。今は作家になろうと思っていながら、なかなか長編作品を書き上げられないでいる。古本屋を営んでいる。
マリオのもとにかつての部下だったパラシオス警部補が訪ねてきて、ヘミングウェイの屋敷で発見された死体に関する捜査を頼まれる。おざなりでも良い、形だけの捜査でよい、“結果は不明”でも良い、からと・・・。
若かった頃のマリオは、一度はヘミングウェイとその作品に憧れ、そして見限った・・・。捜査をしてゆく中でマリオは発見して行く。作家としての全盛を過ぎたヘミングウェイの残影を・・・。
ん~っ!?
題材は良いのだが、いかんせん、書き込みが足りない。登場人物が多すぎるのだ。20人近いキャラクターを登場させたうえで、240ページ程度じゃ、物語として必要十分に成立し得るミステリーは描けないだろう!?と思う。
40年前を舞台とした場面ではヘミングウェイと彼の使用人たちを描き、現代を舞台とした場面ではマリオと彼の友人たちを描こうとする・・・には、ちょいとページが足りないのではなかろうか??
この作品のラスト。マリオと彼の友人たちが海辺で交わす会話と行動が飛び切り美しく、儚いシーンであっただけに、このラストに至る過程をもっと書き込んでほしかった。
このラストの場面だけを切り取って、別の作品に付け加えたいほどだ。実に惜しい。。。次に期待しちゃう。