『奪回者』
FINDER (1998)
第1作目の仕事が終わり、その4ヶ月後がこの第2作の物語の始まりとなっている。
フリーランスのボディーガードである主人公アティカス・コディアックは、第1作で起こったあの出来事以来、本業から遠ざかっており、深夜バーの用心棒のようなことをして凌いでいる。
その深夜のバーで、美貌の女性が若い男に絡まれているところを助けた。アティカスが過去に深く関わった娘だった・・・。
本作でアティカス・コディアックが守るのは15歳の少女エリカ。そして、アティカスと対峙するのは世界でも屈指の戦争・対テロ部隊SAS(イギリス軍特殊部隊:スペシャル・エア・サービス)。
エリカは、アティカスが陸軍時代に護衛に付いた元国防総省大佐の娘である。エリカのガードを依頼してきたのはその元大佐であり、彼はエイズに罹り死に掛けている。
なぜ、SASが少女の誘拐を企むのか? アティカスは仲間を集めチームを組織し、エリカを守るべく臨戦態勢に入る。
一介のボディーガード達が戦争のプロ集団の襲撃からどのように依頼人を守るのか? いくらフィクションでも、そこのところを強引に進めるとリアリティが無くなって、しらけちまうぞ・・・、そう心配しながら読み出したが、余計なお世話だった。作者は見事に、無理なく、ボディーガード・チーム対SASの攻防を描いた。
今回の物語では、まず、アティカスがチームを組織するまでに一波乱あった。そのチーム内での人間関係のアヤが、どのように仕事に影響するのか?そこも序盤の読みどころである。
アティカスは次々と、チーム内、依頼人家族、公的捜査機関の人間たちとの軋轢に晒される。24時間敵の襲撃に備える状況下にあって、さらに、他人の感情に揺れ動かされる。
この物語の主人公は、自分以外の人間、あるいは自分も含めた人間の感情などに構うことのない冷酷なプロフェッショナルに徹することができない。主人公のアティカス自身は、自分はプロだと云いながらも、読んでいる方からはちっともプロらしく思えない。スキルはプロでも、精神がプロではないのだ。
だが、それが、このシリーズのプロットを複雑なものにし、面白さを倍化させる。欠点だらけの主人公が物語をグイグイと牽引して行き、また、主人公に関わる登場人物たちにも魅力を纏わせるのである。
今作では、アティカスとエリカ、エリカとその家族、アティカスとエリカの家族、アティカスとナタリー、アティカスとブリジット、アティカスと亡き友、の関係の描き方・・・・・信頼と裏切り・・・・・に焦点を当てた、キリリと胸を突き刺す、そんな痛みを感じる物語であった。
前作もそうだったが、今作もまた、次作の展開に気を向かせる終わり方だった。この辺は巧いネ。