『風が吹いたら桶屋がもうかる』
7つの短編連作集。
「風が吹いたらほこりが舞って」
「目の見えぬ人ばかりふえたなら」
「あんま志願が数千人」
「品切れ三味線増産体制」
「哀れな猫の大量虐殺」
「ふえたネズミは風呂桶かじり」
「とどのつまりは桶屋がもうかる」
牛丼チェーン店で働く三宅峻平(シュンペイ)。その友人で、気の小さい公務員かつ超能力者の松下陽之助(ヨーノスケ)。同じく友人でパチプロの両角一角(イッカク)。いずれの短編もこの3人が登場する。
牛丼屋にシュンペイを尋ねて美女たちが訪れる。彼女たちは超能力者の噂を聞きつけ、自分たちが抱える問題を解決してもらうため、超能力者の仲介者である(と、彼女たちが勘違いしている)シュンペイを尋ねてきたのだ。
美女たちの依頼内容は・・・、ボーイフレンドを探してくれというもの、亡くなる間際に伯父が遺そうとした最期の一言の意味が判らず、無き伯父の魂を呼び出してくれというもの、開かずの寄木細工の箱の中に隠されたモノを教えてくれというもの、などなど。
美女たちの頼みをナントカしてあげたいと思うシュンペイは、3人が共同で暮らす古い倉庫に彼女たちを連れて行き、ヨーノスケに合わせる。
ヨーノスケの超能力とは・・・、手を使わずに割り箸を割る(30分もかかって・・・)。霊を呼び出す(間違ってブルドッグの・・・)。念力でウクレレの弦を弾いて1曲演奏する(5時間もかかって)。・・・といった役に立つのか立たないのか判らないものばかり。
シュンペイにしてみれば、いずれも普通の人間が普通に行った方が効率的に巧く出来ることばかり。そんなものは超能力というよりも“低能力”としか云えない代物であった。
もっとも、ヨーノスケ自身も、超能力は趣味みたいなもので別段自慢できるほどのものではないと思っている。極めて謙虚なのであった。。。
だが、美女たちは、そんなヨーノスケの能力を目の前にして驚き、是非にとも依頼する。
美女たちはシュンペイとヨーノスケに向かって話し出す。彼女たちの抱える深刻な問題について・・・。自信は無いものの、彼女たちの力になろうと決心するヨーノスケは、美女たちの目前で超能力の発揮を試みる。しかし、その能力の発現には極めて長時間を要する。
ヨーノスケが超能力を発揮させようと集中しているとき、部屋の片隅に居たはずのイッカクが立ち上がる。読んでいた推理小説に文句を云い、ホッポリ投げながら美女の前に座る。どうやらイッカクは、推理小説を読みながらも彼女らの話を聞いていたようだ。美女にいくつかの質問をしながら繰り広げるイッカクの見事な論理展開。依頼人の女性から聞いた事実(データ)だけから推測される事象を次々と連ねていき結論に至る。
イッカクの推理結果を聞いた美女たちは、あわてて彼らの元から飛び出す。超能力を発揮させようと悶絶するヨーノスケを置いて・・・
数日後、美女が3人の元を再度尋ねてくる。事件の顛末を携えて・・・。
イッカクの論理展開によって導き出された結論は・・・・・・、美女らが告げた事実関係とはおよそ掛け離れたものであった。「風が吹けば桶屋が儲かる」のごとし・・・?????????・・・・・・ハテナ・マーク(?) が二十個くらい付きそうな推理結果だった。。。
にも拘らず、美女たちは皆満足し、彼らに感謝し、折り菓子を置いて帰って行くのだった。ヨーノスケが超能力を発揮したその瞬間に・・・・・。
各話は全てこのパターンで終始する。
偉大でおバカなワンパターンの7連チャン。人を食った物語の連続。笑いの7両連結。
まさに“バカミス”。 最高だ。 ブコウスキーの 『パルプ』 にも匹敵しそうだ。
お薦めです。朝になったら「ブ」に走るべし!
jettvanels氏の記事 も読むべし! さらに笑える。