『夏の流れ 丸山健二初期作品集』
著者のデビュー作を含む初期作品集、7編。
■死刑囚官房の管理・監督を生業とする平凡な家庭を持つ刑務官の日常を描く「夏の流れ」。
■堕胎をするために早朝島から舟に乗り、町の病院に行って帰るまでの若い夫婦の一日を描く「その日は舟で」。
■都会への出稼ぎを終え、故郷に帰る甥と伯父の一夜を描く「雁風呂」。
■閉鎖的で小さな村の宿屋を営む男、宿の上客、もう一人の村人、宿屋の主人に従順な男、村の中学校の新任
教師、忠夫。一艘のボートに乗り、カモ撃ちに出掛けた5人の男のギクシャクとした関係を描く「血と水の匂い」。
■15歳の少年の一夜の心の揺れを描く「夜は真夜中」。
■二十も年下の妻に逃げられ身を崩した老画家と、その画家の世話をする書生を描いた「稲妻の鳥」。
■発熱で学校を休んだ高校生が覗き見る、新興住宅地の住人たちの日常の異常性を描いた「チャボと湖」。
『落雷の旅路』
を読んだ時の、あの衝撃ほどではないが、それでも‘ガツン’とやられる作品ばかりだった。
丸山作品の特徴は、自然の情景と主人公の思考・観念の描写だけから成り、会話文のほとんどない文章だと思っていた。
・・・が、それは最近の作品だけなのか? この本を読む限り、初期の作品では会話文も多用されているようだ。長い間文学を書いていればスタイルも変わるのだろう。。。
でも、人の情感を排した硬質で乾いた文体はデビューの頃から一貫しているらしい。。。
■解説は、茂木健一郎
氏。これまた美文。
【これまでに読んだ 丸山作品 】
『ぶっぽうそうの夜』
『夏の流れ 丸山健二初期作品集』