『リヴァイアサン号殺人事件』
1878年、パリ。
イギリスの大富豪の暮らす屋敷で、大富豪本人、執事、家政婦、従僕、小間使い、護衛、門番など10人もの人間が一度に殺された。死んだ大富豪本人が握っていたのは金のクジラのバッジ。
この金のクジラのバッジは、イギリスのサウサンプトンからインドのカルカッタへの処女航海を迎えた新造客船リヴァイアサン号の一等船客と上級航海士にのみ渡された記念バッジだった・・・。
リヴァイアサン号に乗船したフランス警察のゴーシュ警部。彼は、船長から、捜査のための全面的な協力を獲得した。
一等船客で金のバッジを持たない人物は4人。
サー・レジナルド・ミルフォード=ストークス :イギリス人貴族。
ギンタロウ・アオノ :日本の貴族。
マダム・レナーテ・クレーバー :スイスの銀行家の妻。身重。
ミス・クラリッサ・スタンプ :典型的なイギリス女性。
さらに、スエズ運河北端の町ポート・サイドで乗船してきたのは、ロシアの外交官エラスト・ファンドーリン。本作、本シリーズの主人公である。彼もまた、金のバッジを持っていなかった・・・。
ゴーシュ警部は、航海中、5人の容疑者と一等航海士のシャルル・レニエを、ウィンザー・サロンという一室に会して食事を取るよう手配した。。。
岩波書店から海外ミステリーが出版されるのも珍しい(?)し、それがロシア産というのも珍しい。さらに、高村薫が推薦の一文を寄せているのも珍しい・・・? ってことで、衝動買いした。
このロシアの外交官ファンドーリンが探偵役を務めるミステリー作品は、本国ロシアはもとより、30カ国で翻訳され、すでに11作ものシリーズとなっているそうだ。
面白かったら、2冊同時に出版されているもう一方の作品も読もうと思っていた。
しかし、この作品は、極めてオーソドックスなグランド・ミステリーだった。決してつまらない訳ではないが、特別ではなかった。。。
狂言回しの警部はステレオタイプだし、主人公で探偵役のロシアの外交官も若くてハンサムで沈着冷静・頭脳明晰という単純なヒーローだった(実は前作だか、前々作で不幸な目に合っていて、複雑な過去を負っているそうなのだが・・・、この作品ではそういった背景は書き込まれておらず、人間臭さが感じられなかった)。
この2人を含めて、他の登場人物たちも、少々魅力に乏しいキャラクターばかりだった。