『百鬼夜行抄』 | 本だけ読んで暮らせたら

『百鬼夜行抄』


        
百鬼夜行抄、  今 市子 /著、  ソノラマコミック文庫



年末・年始に実家に帰った際に読んだ。文庫版の1~7巻まで。続巻あり。



主人公、飯嶋 律(りつ)。妖魔を感じ、見ることのできる能力を持つ律は、幻想物語作家であった祖父の飯嶋怜(りょう)により、身に魔が付かぬよう、小学校に入るまで女の子の装いをさせられていた。

幻想作家である祖父:怜はペンネーム(雅号?)を蝸牛と称しており、彼もまた幼い頃より、妖魔の世界に踏み入ることの出来る能力を持っていた。

飯嶋 怜が死に際して孫の律に用心棒代わりに残したのが龍の化身の守護魔(?)である青嵐(あおあらし)。さらに、行き掛り上、律に使役されることになったカラス天狗(?)の化身である尾白と尾黒の2羽の小妖魔たち。


物語は、祖父:怜の死去から10年が経過し、高校生になった飯嶋律の周辺から始まる。

律の特異な能力のせいで、知らず知らずのうちに招き寄せてしまう様々な怪異。

律と律を守る3匹の妖魔たち。そして律の母、祖母、司(つかさ)と晶(あきら)という、律と同様に何らかの霊感を有する2人の従姉妹たち。飯嶋家の人々の、怪異や妖魔たちとの間で起こる様々な出来事を描いていく。

物語の進行や成熟とともに、祖父:怜の持っていた能力の大きさや生前に行った妖魔との取引き、飯嶋家の他の面々(祖父の怜には息子・娘、律にとっては伯父・伯母が多い。必然的に従兄妹も多くなる)のキャラクターが徐々に明らかになってきたり、他の登場人物・登場妖魔も増えてきて、多少複雑な人間・妖魔関係が描かれることにもなってくるが・・・・・。


基本的には1話完結で、文庫には各巻6話程度が収められている。


日常(リアル・ワールド)では、幽霊、おばけ、スピリチュアルの類は一切受け付けないが、こと、物語の世界では面白ければ何でもOK(我ながらなんとも都合のイイ考えだ)。

その何でもOKの世界が、時に面白おかしく、時に切なく、時にオドロオドロシク、時に深刻で悲しく描かれている。

読後直後は、どの話も不思議と印象に残る。


物語の内容によっては、『しゃばけ』、『ぬしさまへ』などの大江戸人情捕物帳シリーズと対比が出来るかもしれないが、単純な比較も安直過ぎるか!?

どちらの作品も独特の世界観や雰囲気を醸し出しており、違った味わいを楽しむことの出来る物語だ。