『帰ってきた空飛び猫』 | 本だけ読んで暮らせたら

『帰ってきた空飛び猫』


帰ってきた空飛び猫


『帰ってきた空飛び猫』 CATWINGS RETURN(1989)
アーシュラ・K・ル=グウィン/著、 村上春樹/訳、 S.D.シンドラー/絵、 講談社文庫(1996)


『ゲド戦記』のアーシュラ・K・ル=グウィンの原作を、日本を代表する世界的な作家:村上春樹が翻訳した童話シリーズの第2弾。


田舎の牧場で、優しい兄妹に見守られて暮らす羽を持った4匹の猫たち。成長した彼らのうちの二匹が、かつて暮らしていた街、今でも母親が暮らす街に里帰りする。
・・・が、かつて羽を持つ猫たちが暮らした街はスラム化し、母親の姿も見当たらない。街では鉄球をぶら下げた重機が次々とビルを破壊してゆく。


そんな荒廃した街で彼らが見かけたのは、一匹の羽を持った黒い子猫。子猫は彼らを警戒し、なかなか打ち解けようとしない。しかし、彼らは子猫が自分たちの弟妹であることを確信し、面倒を見る。
母親を捜す3匹の猫たち。やがて母親に出会い、再会を喜ぶ。

そして、母親は末の子猫にも旅立ちを促し、3匹の猫たちは牧場へと戻る。牧場に残った2匹と人間の兄妹は、街に出た2匹の帰りを待ちわびていた。そこへ、子猫を連れて帰ってきた2匹が合流する。


人間の兄妹と5匹になった羽を持つ猫たちの明るい幸せな未来を予感させて物語は終わる。


訳者でもある村上春樹氏の[あとがき]がイイ。
ファンタジーを読むことの楽しさについて、飾らない言葉で語っている。この[あとがき]だけでも一読の価値あり。