『マルドゥック・ヴェロシティ1』 | 本だけ読んで暮らせたら

『マルドゥック・ヴェロシティ1』


マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉  冲方 丁/著   ハヤカワ文庫JA(2006)

3週に渡って刊行される全3巻のうちの第1巻。

本作の主人公である2人=ボイルドとウフコックの死闘場面がプロローグ(Prologue100)となっている。

実は、このプロローグが前作のクライマックスとなっている。

この物語の章番号は“Prologue100”から始まり、99、98、97、96、・・・・・と下っていく。


軍人としてのキャリアにつまづき、軍研究所の特殊被験者として新たなキャリアを築こうとするボイルド。

この第1巻でのボイルドはウフコックとパートナーを組み、新たに建設された新興都市マルドゥック・シティの治安を守る“スクランブル09”の執行者として、自らの価値・有用性を示すことを使命とする。


同時に、この1巻では、
生命保全プログラム=証人保護プログラム=マルドゥック・スクランブル09(オー・ナイン)を発動・執行する機関の成立過程と、その戦闘員たちの活躍が描かれる。


前シリーズでもそうだったが、今作もまた、圧倒的な戦闘場面が描かれる。それがこのシリーズのウリにもなっている。


多くの戦闘場面の描写は極めて映画的、アニメ的である。
人の行動・武器・弾丸の動きを細かくコマ割りし、短文の羅列によって視点の切り替えを表す。この書き方が戦闘場面にスピード感を与える。

一方、後のストーリーに関連したり、登場人物の心象に触れるような重要な戦闘場面では、そのシーンを詳述することにより、読者がスローモーションを観ているかのように表現する。これによって印象を深める。
これらの表現方法の使い分けは計算し尽くされている(と思う)。


キャラクターや舞台設定の新規性だけでなく、小説としての表現にも積極的に実験的手法が採られているのである。

間違いなく、エンターテイメント小説として一級品。



さて、今回のヴェロシティ・シリーズでは、パートナーを組んでいるボイルドとウフコックが、何故? どのようにして? 敵味方に分かれたのか? 前作 『マルドゥック・スクランブル』 以前のボイルドとウフコックが3巻に渡って描かれる・・・らしい?・・・。


2巻、3巻へ・・・、この1巻以上のストーリーの盛り上がりを期待せずにはいられない。

To be continued...



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【前作、『マルドゥック・スクランブル』 シリーズ については ↓↓↓こちら 】

「マルドゥック・スクランブル The First Compression-圧縮」

「マルドゥック・スクランブル The Second Combustion-燃焼」

「マルドゥック・スクランブル The Third Exhaust-排気」