『スロー地震とは何か』 その1
川崎 一朗/著、 NHKブックス
阪神大震災以来、日本の地震防災の方針は、 “事前予知” から “地震が起こった際の減災” あるいは “地震後の対応の迅速化” へと大きく舵が切られた。
はやい話、事前に地震が起こることなんて判るわけないから、地震が起きてもなるべく被害が軽くなるようにしよう、地震が起こったら対応をはやくしよう、ということになったわけだ。
“減災”や“事後対応の迅速化”はもちろん大切なことであり、現状では最も現実的な方針である(と思う)。
さらに、現在の地震科学のレベルでは、予知できそうな地震(東海地震が代表。それと、プレート境界で周期的に起こる地震もなんとかなるかもしれないと考えている人もいる!?)よりも、圧倒的に予知できそうもない地震(列島内の陸地、いわゆる活断層で起こる地震のほとんどがコレ)のほうが多い、と云う理由もある(と思う)。
私の勝手な思い込みかもしれないが・・・・。
ともかく、現状の日本の地震学や地球科学の世界では、(東海地震以外の) “地震予知は諦めた” というような風潮が漂っているように感じられる。
ところが・・・、
ここに、あくまでも “予知にこだわる” という地震学者さんがいる。
そして、地震予知を現実的なものとするためのキーワードとして、「スロー地震」という耳慣れない単語を挙げ、説明する。
スロー地震
「余効的地震」とか「サイレント地震」とか「サイレント・アースクエイク」ともいわれる地震が、地震予知のカギの一つだという。
三陸沖では、太平洋プレートは年間約9cmの高速で日本列島の下に沈みこんで行く。
これが30年~40年間つづくと、太平洋プレートは3m以上も日本列島の下に沈み込んでいることになる。この沈み込んだ分が一気に跳ね上がると地震が、それも、マグニチュード8クラスの大地震が生じる・・・はずだ。
しかし実際のところ、三陸沖では30~40年に1度の割合でマグニチュード8の地震は起きていない。せいぜい50年~100年に1回程度だそうだ。つまり、太平洋プレートの沈み込み速度から期待されるだけの地震が発生していないことになる。
他の場所では、もっと極端な例もある。太平洋プレートが列島の下に沈み込んでいることは確認されているのに、まったく地震が生じていないのだそうだ。
地震発生というイベントによって放出されるエネルギーは、プレート境界に蓄えられたエネルギーの一部でしかない。他のエネルギーはどうしたのか?
理屈上はもっと頻繁に発生するはずの大地震が何故これほど少ないのか?
勘のいい人ならもう気付いたかもしれない?
プレート境界に蓄えられたエネルギーは、地震という瞬時のエネルギー放出だけでなく、ゆっくりと徐々に放出される現象もある。それが「スロー地震」だという。
これまでは、その現象の時間スケールが長く、また、エネルギー放出に伴う地形の変化が微小であったため、観測データには現われにくいモノだったそうだ。それが、近年の観測技術の向上と高精度化にともなってデータに現れるようになったこと、そして、コンピュータの高性能化による解析技術の向上もあって、最近10年程度でなんとなく明らかになってきたそうだ。
このスロー地震のメカニズムが判れば、地震(プレートが瞬時に跳ね上がる方の地震)発生の予知にも役立つだろう、ということで、ほとんど誰も関与することのなかった分野に取り組むことになった地震学者さんが書いた本。
兎にも角にも、私には非常に興味ある分野のことなので、じっくり読み込んでメモしておこう。
と、いうことで、また後日・・・
(興味のない方、すみません)