『荒ぶる血』
ジェイムズ・カルロス・ブレイク/著、 加賀山 卓朗/訳、 文春文庫
先日読んだばかりの 『無頼の掟』 の余韻を残したまま、続けて第2作も読んでみた。
登場人物や展開は異なるが、今作もまた、犯罪に手を染める男たちの物語だ。
主人公やその周りの男たちは皆、敵に対しては非情で冷酷無比。しかし、仲間に対する仁義は命を懸けて貫く。
昔からある古めかしいテーマを前面に出した作品であるが、私はこういう話が好きだ。
数奇な生まれの主人公ジミー・ヤングブラッドは、ガルヴェストンという街を支配するギャング、マセオ兄弟から最も厚い信頼を受けている殺し屋。
(ちなみに、ギャングのマセオ兄弟というのは、前作『無頼の掟』でも名前だけは出てきた)
この作品の本編は、ジミーと彼の二人の相棒レイ・ブランドとLQとともに、縄張りに進出してきたダラスのギャング一味を血祭りに挙げる場面から始まる。だが、前章として、アメリカ人とメキシコ人のハーフであるジミーの両親の物語が数ページを割いて語られる。この導入部が後々のストーリー展開に深く関わるが、そんな伏線としての位置付けというよりも、ジミーというキャラクターに深みを与える書き込みとして、非常に重要なシーンとなっている。
そして・・・、
牧場で育ったジミーの少年時代、馬泥棒を追撃する場面。
マセオ兄弟とジミーの出会いの場面。
ジミーが運命の女ダニエラを見初める場面。
敵対するダラスのギャングを襲撃するジミー・チームの活躍場面。
誘拐されたダニエラを追い、メキシコの富豪と対決する場面。
・・・・・どの場面の筆致もすばらしい。
これらの様々な場面を描いた末に訪れる思わぬクライマックスとラスト。
前作もそうだったが、この著者が描く終盤の物語は意外性に満ちている。
しかし、一貫しているのは、熱く強固な男たちの絆だ。