『カエサルを撃て』
佐藤賢一/著、中央公論新社
ローマの執政官であり属州総督でもあるカエサルが、未開(ローマから見て未開)のガリアを転戦し、征服する様を描いた『ガリア戦記』。
その勝者の歴史に対するアンチテーゼ、佐藤賢一版『ガリア戦記』です。
いくつもの部族がぶつかり合い、混沌とした無政府状態のガリアをまとめあげた男、ウェルキンゲトリクス。
「ウェルキンゲトリクス率いるガリア軍」 対 「カエサル率いるローマ軍」。
当然のことながら、歴史はローマ軍の勝利を告げているわけですが、それを知っていてなお、引き込まれるストーリーです。ウェルキンゲトリクスの野性味溢れるキャラクターと、筋立ての巧みさが秀逸です。
エピローグで佐藤賢一氏は、ルビコン河越えの決断を下したカエサルの心情の変化の要因としてウェルキンゲトリクスとの戦いがあったと解釈します。
腐敗蔓延るローマを改革するために必要な“野生”をウェルキンゲトリクスから授かったカエサルは2年後、ルビコン河を渡ります。
この著者の描く“もう一つの歴史”は面白いです。