『人はなぜ逃げおくれるのか -災害の心理学』 | 本だけ読んで暮らせたら

『人はなぜ逃げおくれるのか -災害の心理学』

人はなぜ逃げおくれるのか―災害の心理学

広瀬弘忠/著、集英社新書


最近の新書は題名で惹き付けておいて売ろうという魂胆がミエミエだそうです。どこかの新聞の書評欄で、そのような主旨の記事を読みました。各社が新書を出版して、市場が飽和状態にある中で、少しでも人目を惹こうという方針だそうです。(ケッ!)


読み終わった今、考えてみると、この本もそうだったのかナという気がします。

この内容だったら、サブタイトルの「災害の心理学」の方が相応しいと思いました。


‘災害とは何か’から始まって、‘心理学的にアプローチした災害時の人間行動パターンの分析’、‘非難行動に影響する要因の分析’、‘パニックについて’、‘生きのびるための条件’など、災害心理学に関係する初歩的な知識を網羅的に説明している本ですから・・・。


私はメインタイトルに釣られて読み始めたのですが、肝心の“なぜ?”についての解答が次のひと言で片付けられているものだから、ガッカリです。


「ヒトの心は予期せぬ異常や危険に対してある程度鈍感にできている。いちいち些細な異常に反応していたら日常生活に支障をきたすため、“遊び”を持つことで過剰なエネルギー・ロスや過度の緊張状態におちいる危険を防いでいる。ある範囲までの異常に対しては異常と感じずに、正常の範囲内として処理する心のメカニズムがはたらく。このような心のメカニズムを“正常性バイアス”といい、このメカニズムが身に迫る危険を危険として認知することを妨げて、それを回避するタイミングを奪ってしまう。」


とまー、この説明はこれでイイのですが・・・、その先、“正常性バイアスが働くときと働かないときの境界はどこにあるのか?”、“集団として正常性バイアスが働くor働かないことは?”、など、私はもっと突っ込んだ分析がしてあるのかと期待したのでした。


サブタイトルの書名だったら許せたのですが、“ヒトはなぜ逃げおくれるのか?”そこについては分析不足と言わざるを得ません。チョット期待はずれ、でした。