「日本の地名」
「日本の地名」 谷川健一/著、 岩波新書
民俗学者の著者による1997年の作品です。
出だしからして、いきなり興味を惹かれる話です。
外海に向く港の近くには“日和山”と呼ばれる標高100m程度の山が、日本中に80箇所以上もあるそうです。地図が載っていますが、九州から北海道まで、太平洋側にも日本海側にも、いたるところにです。
何故か?
中央構造線は日本海側の糸魚川から静岡にかけて日本列島を東西に分断し、そこから西に曲がって伊勢湾を横切り、紀伊半島を横断し、四国を南北に分断し、九州に抜ける大活断層地帯です。この中央構造線に沿った一帯は地すべりが多いことから、地盤災害を連想させる地名が多いそうです。
中央構造線一帯は狩猟の本場でもあり、猪や鹿や熊にちなんだ地名も多いそうです。また、中央構造線付近には水銀を産出する鉱山が多くあったことから、“丹生(にゅう)”という地名や神社が数多くあるそうです
何故、丹生(にゅう)か?
この中央構造線一帯は、鉱山師、鍛冶屋、鋳物師や山伏などの山の民の移動路、交易路であったことから、空海や南北朝時代の南朝方の伝説などに絡んだ話が多く、中央構造線が日本の歴史や文化に寄与した、ということも私には興味深い話でした。
日本には白鳥伝説が多く残っており、特に東北地方から関東地方には白鳥にちなんだ地名があちらこちらにあるそうです。この白鳥に係わる話が記紀や風土記などに神話・伝説として残されています。ここで著者は民族学者としての特質を発揮して、地名から古代史を推測したり、逆に記紀等に記されたことから地名の由来を推定しています。
このへんの話は、2005.02/01に書いた記事「宗像教授伝奇考」でも取り上げられていました。