「陰陽師 瘤取り晴明」
「陰陽師 瘤取り晴明」 夢枕獏/文、村上豊/絵、文藝春秋
夢枕獏氏が描く「陰陽師」シリーズ。その中でも異色の1品です。
文藝春秋社から出版されている通常のシリーズは短編集なのですが、この作品だけ長編(中編くらいかナ)です。しかも“絵”付き。この絵が作品によくマッチしています。娘が読んでいる絵本のようです。
平安京マジカル・ランドの無敵コンビ、陰陽博士=安倍晴明と源氏の棟梁=源博雅が、百鬼夜行、鬼の群れに飛び込んで大活躍する物語です。大活躍といっても、格闘や斬り合いがあるわけではありません。鬼を鎮めるのは博雅の笛の音です。そして晴明は相変わらずノホホ~ンとしながら鬼達ととぼけた会話をして、呪(しゅ)を掛けているだけです。
映画版、マンガ版と、いろいろな「陰陽師」作品があり、それぞれが面白く、独立した作品になっています。
そのオオモト、夢枕氏の書く小説版は闇と雅(みやび)が渾然一体となった、いとおかしき世界観が秀逸です。