「古い骨」 | 本だけ読んで暮らせたら

「古い骨」

「古い骨」 アーロン・エルキンズ/著、 青木久恵/訳、

 ミステリアス・プレス、 ハヤカワ文庫


スケルトン探偵、人類学者、ギデオン・オリバー教授シリーズ第一弾です。

1989年に早川書房が、新ブランド“ミステリアス・プレス文庫”の記念すべき第一弾として出版しました。


いきなり本題から外れますが・・・

ミステリアス・プレス文庫は、全作品がオレンジ色の背表紙で統一されています。この文庫を本棚に収納しておくと、いつの間にか焼けて色落ちしてしまい、白っぽくなってしまいます。

この色落ちした背表紙が本棚に並んでいると、なんとも古めかしいというか、みすぼらしいというか、もうチョット何とかしてほしいナ、と思っていました。


最近、このミステリアス・プレス文庫の出版ペースが落ちて来た?あるいは中止になった?ように思っていたら、初期の作品(「ミス・メルビル」シリーズや、この「古い骨」、同じ著者の別シリーズ作品である「偽りの名画」など)がハヤカワ文庫で再出版されているようです。なんでだろう?



さて、作品の出来ですが、“本格推理モノ”として、水準以上だと思います。

私は、この作品を読むまで、アガサ・クリスティの一部の作品を除き、本格推理モノというのを余り読んでいませんでした。高校生くらいの時にクリスティを読んだときは面白いと思ったのですが、大学生、社会人になってから、私にはクリスティ作品が余り面白く感じられませんでした(ちなみに、未だにホームズ作品も読んだことがありません)。

しかし、この「古い骨」が思っていた以上に面白くて、アーロン・エルキンズが書いたギデオン・シリーズの新作は欠かさず読むようになりました。この「古い骨」で本格推理モノを少し見直すようになりました。


本格推理小説にありがちな、密室モノや、奇抜なトリックを施した謎解きに重点を置いた作品には、ど~も状況の現実感や人物描写などにリアリティさが感じられず、余り好きではありませんでした。


この作品が面白いと思った理由を考えてみると、多分に私自身の嗜好の傾向が強く出ている気がします。

主人公が人類学者という設定であることから、謎に対するアプローチに科学的な手法を用いていること、その手法や考え方に対する主人公の一途さやこだわりがきちんと描かれていること、などでした。でも、やはり最終的にはキャラですかネ。キャラクターがよければ、話の筋が多少ヘンテコな作品でも許せますしネ・・・(「古い骨」はヘンテコな話ではありませんヨ)。


というわけで、お薦めです。