「穢れしものに祝福を」

著者: デニス レヘイン, Dennis Lehane, 鎌田 三平
タイトル: 穢れしものに祝福を
「穢れしものに祝福を」
デニス・レヘイン/著、鎌田三平/訳、角川文庫
ボストンの私立探偵、「パトリック&アンジー」シリーズ第3作です。
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“人探し”にかけては、ボストンの中でも1・2を争うといわれている主人公達。
彼らの探偵としての絶対的な2つの素養が、その評判を確立させていた。
前作「闇よ、我が手を取りたまえ」で心身に傷を負った主人公2人は休業状態。連絡手段をすべて絶っていた。
そんな折、どうしても彼らを雇いたい人物がいた。失踪した娘を探してほしい、という大富豪。その大富豪は、探偵達を拉致してまでも、彼らの素養を必要としていた。
そんな依頼人のやり方を受け入れるはずもない探偵達。しかし、依頼人の話と、当座の経費5万ドルは探偵達を仕事へと駆り立てる。
探偵達の素養の1つ、“自分達が信頼した人間に対する正直さ”。
彼らは探偵業を再開した。彼らは、“もつれをほどき、獲物の臭跡を追い、未知の近づき得なかった真実を解き明かす第一歩を踏み出すこと”を待ち望んでいた自分たちに気付いた。
失踪人捜索の過程で、またしても、事件の様相は一変し始める。
クライマックス。
真相を突き止めた、その時、絶体絶命の窮地に立たされる探偵達。
“フェイル・セイフ”とアンジーの強烈なパンチがそれを救う。
そして、探偵達は、2つ目の素養、“情け容赦のないこと、絶対に容赦しないこと”を発揮する・・・
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前作「闇よ、我が手を取りたまえ」は、作品全体を通して暗く重い雰囲気でした。作者の主人公達に対する扱いも熾烈なものでした。しかし、今作「穢れしものに祝福を」では、作者は、最後に2人の探偵に少しだけ明るい兆しを与えました。
ハッピーエンドとはいかなくても、フィクションに対して、基本的には明るい終わり方を求める私としては、この作品のエピローグは、“ヨシ、ヨシ”ってな感じでした。
この作品を読み終えた段階では、次作への明るい方向への展開を期待しました。・・・が、第4作「愛しき者はすべて去りゆく」では・・・
作者は、作品ごとに、悲観と楽観の振幅を大きく揺らします。