『死都日本』 タイトル(書名)に惑わされる?

著者: 石黒 耀
タイトル: 死都日本
「死都日本」
石黒耀/著、講談社、価格:2,415円
複数のプレートが交錯し特殊な応力場に位置する日本列島、数十万年の静寂から目覚めて変動する九州地下の地殻、マグマの上昇、そして霧島火山の水蒸気爆発から破局的噴火、大規模火砕流・火砕サージに飲み込まれる九州各都市の様相。これらの各場面に至る過程やメカニズムのリアルな描写。圧倒的な科学的知識に裏付けられています(と、思います)。
仕事の関係から、地震関連の知識・情報に触れることは多いのですが、火山噴火に関しては、はじめて知ることばかりでした。特に“破局的噴火”という究極の自然災害については、この本ではじめて知ることになりました。
アカデミックな世界からも絶賛され、日本火山学会では、この本を題材にシンポジウムまで開催したというからビックリです。硬そうな?学会が、エンターテイメント系の本を取り上げるという...このシンポジウムを企画した日本火山学会員の方達の、そういう発想、うれしくなります。
WEBで、そのシンポジウムの資料をダウンロードしたり、伝手を辿って、シンポジウム当日に会場で配布された?資料を手に入れたり、しばらくは夢中になりました。
娯楽性も一級です。
日本国家延命のための“K作戦”を画策する内閣総理大臣・菅原。
暗黒と炎の南九州をスプリンター・カリブで疾走する防災工学の専門家・黒木。
この二人の活躍を中心に、未曾有の災害に遭遇した人たちの姿が感動的に描かれています。
主人公・黒木に感情移入し、徹夜での一気読みでした。
クライマックスで菅原が語る、日本国民・世界に向けたメッセージに感動する人も多いかもしれません。このクライマックスは、著者の想いが込められている箇所かもしれません。私には理想主義過ぎて、チョット鼻に付くところではありましたが...それでも、それを補って余りある面白さです。
書店に並べられている時点では、書名が余りにも???だったので、手にも取りませんでした。
ところが、私の所属する学会(日本火山学会とは違うところです)のWEB上でこの本の評判が挙がっており、それを見て俄然興味が出ました。読んでみてビックリしたのは、すでに書いたとおりです。
史上最高の科学文学だと思いました。それ以来、「防災に係わる人間は読んでおくべきだ」と、鼻息荒く、周りのエンジニア達にも進めています。
(追 記)
同じ著者の第二弾、「震災列島」。
こちらの方は期待外れでした。