「肩胛骨は翼のなごり」 | 本だけ読んで暮らせたら

「肩胛骨は翼のなごり」



著者: デイヴィッド アーモンド, David Almond, 山田 順子
タイトル: 肩胛骨は翼のなごり


「肩胛骨は翼のなごり」 デイヴィッド・アーモンド/著,山田順子/訳, 東京創元社


この作品,ジャンル不明です。不思議な作品です。



マイケルたちの引っ越し先は,かつて一人暮らしの老人が住んでいた古ぼけた家だ。徹底的に掃除をし,壁紙を貼り直したり,床を磨いたり,がらくたを片付けなければならない。マイケルの父親の役割だ。生まれたばかりのマイケルの妹は命に関わるような病気で,マイケルの母親は赤ちゃんを連れて病院通いが続いている。マイケルも心配でしょうがない。
マイケルは父親の手伝いで,ときおり庭の雑草をぬいたりしている。庭の向こうには今にも倒れそうな壊れかけた古い物置のための小屋がある。

日曜日の午後,マイケルはその小屋で彼を見つけた。
彼は,足を体の前に投げだし,壁により掛かっていた。両腕は体の横にダランとぶら下がっていて,身動きもできないようだ。顔は乾いた漆喰みたいに白い。黒いスーツには蜘蛛の糸やアオバエがついていて,ずた袋みたいだ。一目見ただけでは,生きているのか死んでいるのかもわからなかった。
ひねた物言いをする奇妙な生き物。

ミナはマイケルの家の隣に住んでいる。学校には行かず,母親と一緒に詩を呼んだり,絵を描いたり,庭でヒナを育てるフクロウを観察している。彼女はマイケルよりも少し大人びていて,少しだけ物知りだ。
マイケルはミナと仲良くなり,彼が見つけたあの奇妙な生き物の秘密を打ち明ける。

マイケルとミナはその奇妙な生き物(その後,スケリグという名前を知らされる)を救いたいと思い彼に深く関わっていく。彼のことは2人しか知らない。
妙にひねた口ぶりで,どうでもいいような態度をとるスケリグ・・・しかし,いつしか,スケリグは彼らに心を開いていく。そして,マイケルとミナは,スケリグと不思議な時間を過ごすようになる・・・

初々しい思春期の少年と少女が体験する不思議を描いた幻想的な物語です。
奇妙な生き物スケリグが何者であるかの予想はつきますが,作中ではスケリグについての説明はいっさいありません。存在しているという事実だけです。

純真なマイケルが妹を思いやる気持ちや,いつもは少し達観した物言いのミナがマイケルの家族達や鳥たちにそそぐ優しい気持ちが,ホッとさせてくれます。
イイお話です。読後,しばらくはボーっとできます。